トップ国内【連載】連立拡大にらむ 自民新総裁 (中)党員の意思反映が再生の一歩

【連載】連立拡大にらむ 自民新総裁 (中)党員の意思反映が再生の一歩

自民党の新総裁選出後に開かれた両院議員総会で、健闘をたたえ合う(左から)小泉進次郎氏、林芳正氏、石破茂首相、高市早苗新総裁、茂木敏充氏、小林鷹之氏=4日午後、東京・永田町

 事前の自民党総裁選決選の予想を覆し、高市早苗前経済安全保障担当相の新総裁誕生を後押ししたのは党員の圧倒的支持だった。

 決選投票前の高市氏の5分間の演説は自民党の再生に向けた決意の言葉が並んだ。

 「全国各地で自民への厳しい声を聞く。『自民党が何をしたい政党か、よく分からなくなった』『自民党の政策に夢がなくなった』。岩盤支持層、保守層、党員からは特に厳しい声をいただいた」

 こう述べた上で、「全国の党員、国民が固唾をのんで自民党の覚悟を見守っている」と議員に力強く語りかけた。遠回しながら、党員投票の結果を重視して新総裁を選ぶべきだという訴えだった。

 今回の総裁選に投票権のある人は91万人で、前年から13%減った。減少幅は12年に政権復帰して以来、最も大きい。ネット記事で京都大学の藤井聡教授は、過去6年で自民に投票したことがある有権者のうち、7月の参院選挙で自民以外の保守系野党に投票した人の16%が自民支持を辞めた理由として昨年、「高市氏が総裁選で敗れた」ことだと、前回総裁選の逆転結果を指摘。離れた支持層の多くが高市新総裁率いる自民に戻ってくると予測した。

 元自民党政調会長室長で政治評論家の田村重信氏は、「党員票で小泉氏に圧倒的な差をつけたことが1回目投票にも決選投票にも影響を与えたのではないか」と分析した。

 総裁選は「解党的出直し」がキーワードになった。しかし、総裁選レースで石破茂首相の路線継承を表明し、トップに立つと予想された小泉進次郎農林水産相は、陣営幹部が「やらせ」コメントを投稿するよう依頼していた問題が発覚。党内外から批判が集まった。さらに、投票前夜、小泉氏サポーターの菅義偉副総裁と距離を置く麻生太郎最高顧問が、自派閥に対し決選投票では党員票1位の候補者に票を投じるように指示したことで「議員票が大きく動き、潮目が変わった」(田村氏)。

 自民はこれまで主流派と非主流派、あるいは、保守とリベラルの間で「疑似政権交代」を繰り返してきた。2022年に安倍晋三元首相が暗殺されると、当時の岸田文雄首相は「穏健保守」を自認しながらリベラル色を強め、後継の石破氏はそれをより鮮明にし、安倍氏が目指した「強く、美しい国」は忘れられつつあった。5候補のうち、唯一の安倍氏路線の継承者は高市氏だった。

 昨年の衆院選では、派閥の政治資金パーティー収入不記載があった議員の一部を公認せず、公認した場合でも衆参両院選挙で衆院の比例重複を認めないことを決定。旧安倍派を中心に多くが落選の憂き目に遭った。参院選でも「裏金議員」のレッテル貼りが影響し、旧安倍派議員は激減した。

 「有権者に説明を尽くし、選挙で厳しい審判を受け、国民の代表として議席を得た議員に対して、さらに何らかの再処分を行うことは考えていない。国民の代表として選出された以上、適材適所でしっかりと働いてもらう」

 総裁選後の記者会見で高市氏は、「みそぎが済んだ」として不記載議員の要職起用を示唆。「全員活躍」と「全世代総力結集」で党を立て直すことを誓った。高市新総裁の下、自民再生への第一歩が踏み出された。(総裁選取材班)

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