
芸予諸島(愛媛県今治市、広島県尾道市など)は、瀬戸内海の西側を東西に分断するように大小の島々が南北に連なる。穏やかに見える海だが、狭い海峡に入ると大潮時には高低差3メートル以上にもなる潮の満ち引きや、最大10ノット(時速約18キロメートル)の潮流が船を襲う。
南北朝時代から室町時代にかけて活躍した「村上海賊」は、瀬戸内海航路を掌握し、その潮を乗りこなした。中世から近世にかけて航海の安全を保障し、巧みな航海術と厳しい掟(おきて)で瀬戸内海の交易・流通の秩序を支えた。海賊と呼ばれてはいるものの、海の警察や商人の側面も強かった。
瀬戸内海の日本三大急潮流の一つ来島海峡の急流は、大島(今治市)にある観光遊覧船に乗ることで体験できる。水面が沸騰したように見える湧潮や、飛沫(ひまつ)を立てる渦潮などを前にし、木製の手漕(こ)ぎの船で瀬戸内海を自由自在に乗りこなした村上水軍の凄(すご)さを感じる。



因島(尾道市)にある「因島水軍城」は1983年に築城された全国でも珍しい城型資料館。村上水軍の武具、遺品、古文書などの歴史資料が展示され、武者人形による作戦会議の模様が再現されている。水軍戦の模型や甲冑(かっちゅう)など村上水軍にまつわる品を見ることができる。近くには因島村上氏の一族とその家臣を含めた墓石群がある。一般の墓地の中にあって墓石群は異彩を放っていた。





同城からは、信仰の場であり戦略的な見張り場でもある白滝山が望める。白滝山の山頂には観音堂と五百羅漢(約700体)の石仏がある。それぞれ顔が異なる羅漢は、付近の岩石や松林の自然に溶け込み、独特で厳かな雰囲気を醸し出している。展望台からは瀬戸内海に浮かぶ大小の島々が織り成す多島美を望むことができる。
(文と写真・宮沢玲衣)







