
自民党総裁選が22日告示、10月4日に投開票される。衆参両院で与党が過半数を割る不安定な政治状況下にあって、自民は「政治とカネ」の問題や急進的なリベラル政策などで失った国民の信頼をどう取り戻すのか。新総裁に引き継がれる課題を探る。 (総裁選取材班)
「#変われ自民党 日本の未来を語れ!」
自民党は今回の総裁選のテーマを、若者に人気のSNS「TikTok(ティックトック)」でライブ公表した。平井卓也広報本部長は「過去の悪いところも全部変えてくれという皆さんの声だと思うので、総裁選のテーマにしようと思った」と説明した。
自民は2024年10月の衆院選と25年7月の参院選で惨敗。衆参両院で自公与党が過半数を割った。自民は参院選の総括文書で、「国民から突きつけられた『現状からの脱却』という至上命題を真摯に受け止め」、「党を一から作り直す覚悟で解党的出直し」に取り組むことを誓った。一番乗りで出馬表明した茂木敏充前幹事長は、会社に例えて「倒産寸前の危機」と表現した。
22年7月、精神的支柱だった安倍晋三元首相を銃撃事件で失ったことと自民の凋落(ちょうらく)は無関係ではない。当時の首相・岸田文雄氏は、安倍政権との違いを意識し、穏健保守路線を志向。党内の強い反発を押し切ってLGBT理解増進法を成立させた。その流れの中で、選択的夫婦別姓制度の議論が起こるなど、性急にリベラル化が進み、岩盤支持層の自民離れを招いた。
支持率低下に追い打ちをかけたのは、「政治とカネ」を巡る問題だ。23年末、主に旧安倍派の議員を中心に政治資金収支報告書の不記載問題が発覚。39人の党員資格停止や役職停止などの処分が下された。ただ、その後も企業・団体献金の禁止を要求する一部野党との折り合いがついていない。
「政治とカネ」の問題を巡り、岸田氏は率先して自らの派閥を解散させると、旧安倍派や茂木派らが追随。麻生派を除く全ての派閥が解散した。派閥を悪と決め付ける一部有識者やメディア報道に屈した形で、自民の組織弱体化に拍車を掛けた。
こうした逆風の中で行われた昨年の衆院選で、非公認となった候補者が代表を務める支部に対して、活動費と称して2000万円が振り込まれたことが明らかになり、支持率をさらに押し下げた。物価高で生活に困っている国民が多い中で、国民との金銭感覚の違いが浮き彫りになったと同時に、昔からの金権体質が残っていることを印象付けた。
参院選総括によると、地方組織から「高齢化や党勢の衰退傾向などに伴って地方議員が減り、国政選挙で地方組織が十分機能しない実情がある」という訴えも多く出た。自民支持層の割合は高年齢層で高い一方で、50代までの若年層・現役世代の支持率が著しく低下し、他へ流出している傾向が明らかになっている。今回の総裁選で投票資格がある党員・党友は前回から約14万人減り、91万人5574になった。ピークだった1991年の546万人に比べると2割ほどしかない。
参院選で躍進した国民民主党は玉木雄一郎氏、参政党は神谷宗幣氏と若くて勢いのある代表が立っているのに比べ、自民の「オールド政党」感は否めない。
立候補する5人は全員、昨年の総裁選に出馬しており新鮮味に欠けることから、立憲民主党の野田佳彦代表は今回の総裁選を「敗者復活戦」と揶揄(やゆ)。キングメーカーと称される元首相の麻生太郎最高顧問、菅義偉副総裁らを念頭に「懲りない面々が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する懲りない面々に解党的出直しはできるのか」と批判した。






