トップ国内【特報】トキを復興のシンボルに 能登・羽咋市で本州初の放鳥へ

【特報】トキを復興のシンボルに 能登・羽咋市で本州初の放鳥へ

トキ保護70年 村本義雄さん「コウノトリも見られる場所に」

本州最後の生息地にモデル地区

トキの餌の確保が定着のカギと語る村本義雄さん

国の特別天然記念物で国際保護鳥のトキが、半世紀ぶりに能登の空を舞う――。トキの野生復帰に向け来年6月、石川県の羽咋(はくい)市で本州で初めて放鳥されることが決まった。本州最後の生息地でもあった能登では、トキ放鳥を能登半島地震からの復興のシンボルに、と期待が高まっている。(特別編集委員・藤橋進、写真も)

かつて日本各地で生息していたトキは、乱獲や農薬の使用で激減、2003年に佐渡で日本生まれの最後の1羽が死んで絶滅した。その後、中国から贈られたトキを佐渡で人工繁殖し、野外へ放鳥する取り組みが進められ、佐渡の野生のトキは昨年12月時点で576羽確認されるに至っている。

ただ生息域が佐渡1カ所のみでは、病気などが蔓延(まんえん)した場合、絶滅のリスクがあるため、環境省は本州でも放鳥することを決め、今年2月能登半島地域を放鳥地域に指定した。石川県の馳浩知事は「復興の途上にある石川県にとって本当に大きな朗報だ。トキが復興の象徴になることは間違いない」と喜びを語った。7月には能登の4市5町と関係団体でつくる「能登地域トキ放鳥受入推進協議会」が、放鳥場所を羽咋市南潟地区(邑知潟<おうちがた>周辺)とすることに決めた。

もともと能登はトキの本州での最後の生息地だった。昭和45年、穴水町で捕獲された最後の1羽(オス)を佐渡に移し、佐渡のメスと同居させ繁殖を期待したが、翌46年に死んだ。能里(のり)の愛称のこのトキは剥製にして石川県に戻され、現在県立歴史博物館で展示されている。

そんな歴史がある能登ではトキの本州での野生復帰の計画が発表されて以来、環境整備に取り組んできた。「モデル地区」を設定し、田んぼの化学肥料・農薬5割以上減、魚道の整備、生き物の生息調査などを進めてきた。

来年6月、トキが放鳥される南潟地区

放鳥場所に決定した南潟(みなみかた)地区は、モデル地区の中でもトキの活動範囲となる2㌔圏内に水田が広がり、放鳥が予定される15羽から20羽の餌場として十分で生物の生育状態もよく、野生復帰が進む佐渡に匹敵する環境が整っていると判断された。同地区には、2011年以降、佐渡から飛来したとみられるトキもたびたび目撃されている。

70年以上にわたってトキ保護活動を続け、今年4月に100歳となった村本義雄さんが昭和31年、初めて本州で生息するトキの写真を撮影した眉丈山(びじょうざん)もすぐ近くにある。

南潟地区での放鳥が決まったことを喜ぶ村本さんだが、トキの定着を楽観はしていない。特に気になるのは県内でコウノトリが営巣するようになり、南潟地区にも飛来するようになったことだ。「コウノトリがトキの餌を食べてしまう可能性が十分ある。コウノトリはトキより体も大きい。そうなると、餌を取れなくなったトキが他県へあるいは佐渡に帰ってしまうということもあり得る」と言う。

トキと同じく国の特別天然記念物のコウノトリは兵庫県豊岡市などで野生復帰が進められ、石川県の志賀町でも4羽が確認されている。しかし、餌が十分にあればこの問題は解決する。村本さんも「そうなれば、能登は全国で唯一トキとコウノトリが一緒に見られる場所になる」と期待を膨らませる。

村本さんのインタビューの後、南潟地区を訪れると、青々とした水田の中に羽の先端が黒い大型の白い鳥が4羽ほど餌を漁(あさ)っていた。姿、大きさからすぐにコウノトリと分かる。トキとコウノトリが見られる地区が実現するかどうか、餌場の確保に懸かっているようだ。

現在トキは全国7施設で飼育されており、佐渡トキ保護センターによると飼育中のトキの総個体数は168羽で、いしかわ動物園でも成鳥とヒナを合わせて12羽が飼育されている。どのトキが来年放鳥されるかは未定だが、放鳥が決まったトキは佐渡の野営復帰ステーションに送られ復帰への訓練が行われる。

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