トップ国内【連載】―命守る―災害時のトイレ対策(上)紙製で軽量、組み立て容易 女性に配慮、衛生で安全

【連載】―命守る―災害時のトイレ対策(上)紙製で軽量、組み立て容易 女性に配慮、衛生で安全

完成したトイレ(ドアを取り外した状態)=8月28日、都内

大規模災害のリスクを抱える日本において、避難場所の確認や非常食の備蓄などへの関心は高いが、トイレ対策は見落とされがちだ。トイレを我慢するために水分摂取を控え、脱水や体調不良で命を落とした被災者もいる。声を上げづらい問題だからこそ、関連死を防ぐ知恵と備えが必要だ。(山田芙珠美)

災害用・備蓄型の組立式個室トイレ「ほぼ紙トイレ」を製造・販売するスマイル・ブラザーズ・ジャパンは、8月28日、東京都内で講習会を開いた。

「思ったより簡単」

「女性でも組み立てられそう」

企業の防災担当者や備蓄検討者など約20人の参加者は口々に感想を述べた。

「ほぼ紙トイレ」は便器や留め具など一部を除き、材質は紙だ。選挙ボードと同程度の超耐水性で雨にも強く、しかも軽量なので女性2人でも楽々運搬できる。組み立てに工具を必要とせず、2人いればわずか20分で組み立てられるのも大きな特徴だ。講習会では、完成した個室に入って座った瞬間、改めて広さを実感し、「自宅のトイレより快適」と驚く人もいた。

災害時のし尿は廃棄物処理法により自治体がバキューム車で吸引・運搬して処理するが、収集には時間がかかるため、その間はタンク内でバクテリアが臭いを抑え衛生を保つ。超濃縮バクテリアが1㍑ほどの容器に入ったバクテリア製剤を1本注入するだけで効果を発揮する。

同社によると、「ほぼ紙トイレ」は防衛省や海上自衛隊、東京大学などの教育機関、トヨタ自動車北海道など、全国の有名企業・施設で採用されている。

2016年の熊本地震での災害仮設住宅234世帯を対象にした調査では、避難所に仮設トイレが設置され利用が可能になった世帯は、災害当日だとわずか7%。8日後には約90%の世帯が利用できるようになったが、最も遅い世帯では31日後にようやく利用可能になった。

トイレの組み立て実演の様子=28日、都内(山田芙珠美撮影)
トイレの組み立て実演の様子=28日、都内(山田芙珠美撮影)

遅れの原因の一つは運搬や設置の困難さだった。一般的な組立式や完成型の仮設トイレは耐久性が高く、避難所など大人数が使うことを想定した設計になっている。しかし、設置には人手と時間が必要だ。下水道管路にあるマンホールの上に簡易トイレを設置して使用するマンホールトイレという方式もあるが、水道や電気が復旧していないと利用できない。

こうした課題により注目されつつある「ほぼ紙トイレ」。ライフラインが途絶えた環境でもすぐ使えることはもちろん、内開きドアで中から安全に施錠もでき、使用中不意に開けられることを防げるため、女性から高い評価を得ているという。

2024年元日の能登半島地震では、パチンコ店のマルハン七尾店が1月3日の営業再開から同16日まで、昼夜問わず駐車場に「ほぼ紙トイレ」を開放。1月7日に仮設トイレが届いた後も使用を続け、高齢者や子連れも安心して利用できた。同店長は「プライバシーも確保され、音や臭いもなく、備蓄して良かった」と振り返る。トイレについて情報発信するとほかの地域からも利用希望者が集まり、社内報告では「災害時のMVP」として評価された。

同じく能登町で支援活動に当たった新潟市消防局は、1月4日に宿営地で「ほぼ紙トイレ」を設置し、1月7日に仮設トイレが届くまでの3日間、隊員が使用。特に女性隊員から好評だった。

担当者は「災害に備えるには、自分や周囲の状況に合わせて準備することが重要。特にトイレなどの衛生対策は、忘れがちだが最優先で考えるべき」と語る。こうした備えが、災害時の安心につながる第一歩だ。

【連載】―命守る―災害時のトイレ対策(下)日常使いで〝備えない防災〟踏み台や収納箱が早変わり

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »