
世界日報はこのほど、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)が解散させられた場合、教団の所有する墓地の処遇について、文化庁宗務課と厚生労働省に質問を送った。それぞれ回答はあったものの「清算に係る事項は清算人が決定すること」という内容にとどまり、明確な方針は示されなかった。両省庁ともに清算人へ丸投げする姿勢が浮き彫りとなり、信者遺族たちの怒りや不安は増すばかりだ。(信教の自由取材班)
文部科学省が出した家庭連合への解散命令請求を巡り、東京高裁で抗告審が行われているが、東京高裁で解散決定が出た時点で清算手続きへと移行する。
教団および教団関係者が管理する墓地は全国に8カ所あるが、世界日報はこのほど、もし教団が解散した場合の墓地の処遇について、文化庁宗務課に質問状を送付した。①清算手続きが滞った際、管理者不在に伴う不利益や土地の所有者から契約終了を言い渡されるなどのトラブルが墓地で起きた際の対応策②清算手続きが滞ったとしても、墓地利用者の権利を損なわないための措置③墓地利用者の不安を解消するための相談窓口設置といった支援の有無―など、5項目を尋ねた。
また、厚生労働省にも質問を送付。「教団解散後、教団が土地を所有する墓地の管理責任はどうなるか」「墓地の利用者が、解散後も安心して利用し続けるための法的な保証はあるか」など、やはり5項目の質問状を送った。
期日までに返答はあったが、質問それぞれへの回答はなかった。文化庁宗務課、厚労省とも宗教法人法に基づき「清算に係る事項は清算人が決定すること」との回答にとどまった。清算人へ責任を丸投げする返答で、法人解散後の墓地の扱いに関する方針などはないに等しい状況がうかがえる。

国際弁護士の中山達樹氏は、両省庁の見解に「過去に先例がなく条文も粗いので、省庁でもこのくらいの抽象的なことしか答えられないのだろう」と指摘。解散命令後の墓地の処遇には「宗教行為が禁じられるため、清算人の裁量次第では先祖を祀(まつ)ることも『宗教行為』とされる可能性もある」と懸念を示す。
その上で、東京地裁が3月に出した解散命令について「信者の人権を『反射的利益にすぎない』と切り捨てられたが、墓地問題についての不安は何の保証もなく、とても『反射的利益にすぎない』とはいえないだろう」と強調した。
教団の墓地関係者も省庁からの回答に「大変遺憾だ」と非難する。家庭連合信者が埋葬されている「中日本霊園」(三重県鈴鹿市)の遺族会の中林次郎事務局長(60)は「政府も省庁も解散後を全く考えていない。だから『清算人に一任』という回答になるのだろう。信者の抱える事情や生活、心の拠(よ)り所などを完全に無視していて腹が立つ」と憤る。「解散しても墓地は大丈夫だと、明言してもらえないことが本当に不安だ。解散請求するなら、その後の処遇一つ一つをはっきりしてほしい」と訴えた。
また、群馬県片品村に教団が所有する墓地「尾瀬霊園」の担当者は「一番理解しておくべき部署でありながら、回答があまりにも無責任。両省庁にはもう一度、真摯(しんし)に向き合っていただきたい」と強調した。
信者遺族からは「解散になったとしても(墓地は)現状維持であってほしい」「これまで行っていた慰霊祭などができなくなるのではないか」など、さまざまな懸念の声が聞こえる。教団本部によると、家族や親族らが教団の墓地に埋葬されている信者遺族から、解散が決定すれば被害を受けるとして、解散命令を下さないことを求める嘆願書428通が6月20日に東京高裁に提出された。7月18日時点で、追加となる110通以上の嘆願書が同本部に届いており、随時提出の予定だという。






