
20日投開票の参院選で自公が過半数を割った一方、参政党が14議席を得て、非改選と合わせて15議席に躍進。石破茂首相は、自身の進退について判断していない。自民党で長く政務調査会調査役を務めた政治評論家の田村重信氏に首相の責任論や参政の躍進の背景について聞いた。(聞き手・豊田剛)
――参院選で自公過半数を割ったが、石破首相は退陣を否定している。
石破首相は改選議席の目標を50としてそれを達成できなかった。過半数を失った場合、上手に交渉すれば、野党の一つくらいは引き込める。事実、自民党はそうやって危機を切り抜けてきた。しかし、首相がこれだけ落ち目になると、野党もそう簡単には乗ってこない。
選挙に2回続けて負けたら直ちに責任を取るのは当たり前。辞任しなければ党内外から批判が出てくる。党を立て直すために新しい総裁の下でやっていくのが筋だ。リーダーが結果に対して責任を取らなければ国民から信頼を失うだけだ。

――参政が選挙前の予想を上回る議席獲得となった。これほどの躍進は予想できたか。
世の中はどんどん変化している。
昨年の都知事選で、前安芸高田市長の石丸伸二という知名度の低い候補がなぜ2位になったのか。SNSで発信・拡散したこともあるが、藤川晋之助という有能な選挙プランナーが彼を主要候補の一人としてメディアに取り上げてもらい押し上げたことが大きい。街頭演説するとものすごい人が集まり、社会現象となった。
参院選の期間が17日と長いのも、参政を押し上げた一因だ。選挙期間中、主要メディアが参政をしきりに話題にした。「高齢女性は子供を産めない」などの発言で批判されても、それを力に変えていったぐらいだ。注目されて大躍進したというところがやはり大きい。
参政はいい意味で変わり身が早い。神谷宗幣代表は失言すれば、すぐに謝罪し説明する。それに比べ、自民は大きい政権政党なので「運がいいことに能登で地震」などといった大失言では対応が遅い。
今はネットの普及発達で情報のスピードが速いことを参政はよく理解し、ネット時代の選挙をよく研究している。
――参政が自民批判票の受け皿になった。
自民が石破茂総裁を選んだ時に、石破氏を嫌って安倍晋三元首相を支持する勢力が自民を見限った。今まで自民を擁護してきた保守系の論客や産経新聞までもがものすごい石破批判、自民批判を繰り返した。
保守層が自民から離れ、そっくり参政に行った。少し前は自民批判の受け皿になっていた日本保守党は、内部分裂を起こして低迷した。その結果、被害を被ったのは、旧安倍派の国会議員。多く落選した。
――自公が敗北したが、立憲民主党も議席を増やせなかった。
立民の改選議席は横ばいだが、実質は敗北だ。前回より票を減らした。共産党も大きく減らした。時代的に、革新の影響力はすごく小さくなっている。
その代わり、生活苦や外国人に対する不満を参政がうまく取り上げた。反グローバリズムといった欧米で起きてる現象が日本にも起こっていて、そういう時代にもマッチした。
参政は注目を浴びたことで、メディアが色々と批判してくるから、今後は簡単にはいかないだろう。小さな政党なら誰も批判しないが、ここまで議席を獲得すると厳しい目で批判してくる。





