

昨年の衆院選で与党が過半数割れを起こし、迎えた参院選。従来、「政権の信任投票」の性格を持つが、自民党に対して逆風があるときには「政権選択選挙」の性格が色濃くなり、野党第1党(立憲民主党)に得票が集まる傾向があった。
だが、今回はこれまでにない結果となった。立民、日本維新の会、共産党の「既存野党」は伸び悩んだ一方、参政党や国民民主党などの「新興政党」が躍進。今の政治に不満な岩盤保守層や無党派層の受け皿となった。
立民は改選前と同数の22議席。そのうち1議席は任期3年の補選枠である東京選挙区7番目当選の議席で、事実上後退した。得票率は12・5%で、前回比で0・3ポイント落とした。立民の原口一博衆院議員は21日、インターネットに動画を投稿し、参院選結果について「非常に厳しい。野党第1党としても考えられないような票だ」と事実上の敗北宣言とも取れる発言をした。
共産は「生命線」としていた京都を含め四つ落とし、改選前7議席から3議席までに減らした。
大きく議席を伸ばしたのは国民と参政で、消費税減税や国民負担率削減の訴えが有権者に響いた。
中でも、「日本人ファースト」という分かりやすいスローガンを掲げた参政は、コメや光熱費の高騰による生活苦や外国人に対する不満をすくい上げ、欧米で見られる反グローバリズムの潮流に乗った。今回、選挙区で7議席、比例代表で7議席、合わせて14議席を得て、非改選と合わせて改選前2議席から15議席に。比例代表では約742万票を獲得。前回3年前の参院選の4倍超となった。
躍進のきっかけの一つは、参院選直前に比例当選した梅村みずほ氏が入党したことだ。維新に所属していたが参院選候補を決める党内予備選で敗れ、ガバナンス不全を理由に離党。参政に引き入れたのが神谷宗幣代表だった。
これで、公選法が定める国政政党要件の一つ「国会議員5人以上」を参政が満たすと、党首討論会への出席が認められ、テレビなどの露出が増えた。これに伴い、ユーチューブの党公式チャンネル登録者数が急増。台風の目になった。
開票が進む20日夜、神谷氏はテレビインタビューで「発言が切り取られたり、たたかれた。それが逆に党員の心に火を付けた」と振り返った。
参院選で見せた参政の勢いは、かつて元大阪府知事の橋下徹氏らが日本維新の会を立ち上げた時や、昨年の都知事選で無名だった前安芸高田市長の石丸伸二氏が旋風を起こした時に似ている。しかし、これらと違うのは、党組織が全国を網羅し候補者を擁立しているところだ。
選挙期間中、ある維新陣営の地方議員は「敵は自公ではない。維新を『既存政党』と批判してくる参政党だ。結党当初の維新とは比べ物にならないほど勢いがある」と警戒心を示した。
参政は2020年の結党以来、地道に地方組織をつくり、党員拡大し、選挙に候補者を立ててきた。さらに、反自民の受け皿になったのはネットにおける「どぶ板」選挙だ。発信し続け、SNSに反応があればリアクションするなど草の根的に有権者と接触を図り、特に若年・現役世代の心をつかんだ。
政治評論家の田村重信氏は次のように分析する。
「参政党はいい意味で変わり身が早い。神谷氏は失言すれば、すぐに謝罪し説明する。自民党は大きい政権政党なので『運がいいことに能登で地震』などの大失言での対応が遅い。今はネットによって情報のスピードが速いことを参政党はよく理解し、ネット時代の選挙をよく研究している」
これまで浮かんでは消えた新党ブームだが、参政には十分に伸びしろがある。3年後の参院選、次期衆院選でも台風の目となりそうだ。
(参院選取材班)
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