トップ国内裏目になった政権延命

裏目になった政権延命

編集局長 窪田伸雄

報道各社の取材を受ける石破茂首相=20日午後、東京・永田町の自民党本部

参院選は選挙が進むにつれ、「日本人ファースト」を掲げた参政党、「手取りを増やす」と訴えた国民民主党が脚光を浴びた。双方合わせれば保守的な積極財政で、安倍晋三元首相の保守政策に近い。石破・自民党はみるみる苦戦に追い込まれ、開票後、夜半に自民・公明与党の過半数維持が微妙となった。

誰もが予想できたことだ。既に9カ月前、石破茂首相の下で自公与党は衆院選で大敗している。それも絶対安定多数から一挙に過半数割れだ。明確な挽回策のない同じ政権のままでは当然、結果は同じ繰り返しになる。〝前哨戦〟の東京都議選でも自民は過去最低の議席数になり、内閣支持率も下落が続いていた。この状況の中で、焦点は少数与党の自公が参院でも過半数割れするかに集中した。

一方、政策争点は盛り上がりを欠いた。目玉の物価対策で与党の給付金公約にマンネリ感があり、野党の減税公約は政権を獲(と)らなければスローガンでしかない。

自民はなぜ予想可能な敗北にそのまま突き進んでしまったのか。一つに政権トップの総理総裁および幹事長ら党執行部が画する「延命」が裏目に出た。恐ろしいことに、衆院解散・総選挙を自ら打って歴史的惨敗を招いた石破氏は、出処進退をわきまえず居座った。森山裕幹事長も同じ。選対委員長の小泉進次郎氏に責任を被(かぶ)せ、幕引きにした。

もう一つは、これに抗(あらが)う健全な党内活力が働かなかった。総裁選から間もなかったとはいえ、大敗の責任を問うことなく石破氏を首相指名した議員らは唯々諾々と従う群れとなり、あたかも選挙結果を意に介さない党内独裁に写った。これでは支持層は離反する。参院選になって首相の応援を拒否しても遅過ぎる。

昨年9月の総裁選では、一般選挙の民意に近い党員投票の結果は高市早苗氏が1位だったが、派閥力学が働く国会議員投票で覆している。ここには前首相の岸田文雄氏が影響力を残す意図が働いたと指摘されている。このような「延命」ゆえに選出されたのが石破氏だった。

ただ、政権延命を図ることは常なること。そこに狂いが生じたのは、3年前の参院選で安倍晋三元首相が凶弾に倒れた事件後からだ。岸田政権下では、マスコミ報道に屈する大衆迎合が著しくなった。

まず、半世紀に及んで多数の自民党所属議員の選挙応援をしてきた国際勝共連合および友好団体の世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)との「関係断絶」、家庭連合への解散命令請求があった。

また、LGBT理解増進法の制定は、保守の支持層や無党派層の反対、党内の異論を押し切って行われた。いわゆる「裏金」を巡っては安倍派つぶしを兼ねて「派閥解散」を演出した。これら岸田氏の言下に行われた大手メディアへの迎合で、延命どころか支持率は低迷。岩盤保守層の支持が崩れた。後を引き継ぐや否や、石破政権が大きな審判を受けたにすぎない。

「一強多弱」と呼ばれた国会勢力の構図は、もはや国政選挙6連勝を果たした安倍政権時代の語り草だ。今後は「多党」に包囲される。事件後、岩盤保守層の票田を安易に切り捨てる「一強」のおごりは、豊作が続いたおごりから餅を弓矢の的にした「餅の的」(豊後国風土記<ぶんごのくにふどき>)に例えられよう。射た餅は白い鳥となって飛んでいき、豊作の地は不毛の地になったという。

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