トップ国内安倍元首相銃殺から3年 左傾化の防波堤だった 自民ふがいなく喪失感深まる【論壇時評】

安倍元首相銃殺から3年 左傾化の防波堤だった 自民ふがいなく喪失感深まる【論壇時評】

参院選の結果を受け記者会見する自民党総裁の安倍晋三首相(2019年7月22日午後、東京・永田町の自民党本部)
参院選の結果を受け記者会見する自民党総裁の安倍晋三首相(2019年7月22日午後、東京・永田町の自民党本部)

人の真価はいなくなってから分かる、とよく言われる。国の舵(かじ)取りをする政治指導者ならなおさらである。

安倍晋三元首相が凶弾に倒れて3年が経(た)った。参議院選挙の投開票日が近づくに従い与党の自民、公明両党で非改選議席を合わせても過半数を割り込む可能性が強まっている。保守論壇は自民のふがいなさについて、保守政治家として日本の政治を牽引(けんいん)してきた安倍氏を失ったことが大きいと分析する一方、その人柄と功績を再評価している。

安倍氏の命日(7月8日)前に発売された月刊誌8月号で、保守の論客たちがさまざまな角度から同氏の思い出を語っている。その一つ「Hanada」で、文藝評論家の小川榮太郞氏は「あの人の笑顔には裏がなかった」「安倍さんほどの『人たらし』を私は他に知らない」と、その人柄を偲(しの)んだ(=「安倍さんの底知れなさ」)。もちろん「人たらし」とは悪い意味ではない。接する者に嫌なものを感じさせず、ぞっこんにさせるのだという。

だから、銃弾に倒れる前も後も、安倍氏の知人が集まると、「べた惚(ぼ)れ話」か「関係自慢」の競争のような状況になり、小川氏も同氏に心酔している一人だと告白している。

だが、この話を披露すると、異口同音に「意外だ」と言われるという。なぜなら、テレビや週刊誌が「強権政治家、森友・加計(かけ)・桜、統一教会など疑惑の塊(かたまり)」という「偽りの安倍晋三像」を伝え、「大物だが悪者」とのイメージを定着させたからだ。「恐るべく、悲しむべきことであるという他はない」と、小川氏はメディアによる世論操作を嘆いた。

左右両方のイデオロギーを持つメディアがあるのは当たり前のことだ。不健全なのは、たとえ偽りの像であってもそれが社会に定着してしまうほど、左派メディアが影響力を持ち、国民もその偽りを見抜くリテラシーを失っていることなのだ。

“安倍政治”についての評価はどうか。麗澤大学教授の八木秀次氏は「築城十年、落城一日」とのことわざを使って安倍氏亡き後の政治の暗転を表現した(「正論」「誰が“安倍晋三”を殺したか 石破政権批判」)。

この論考で八木氏と対談した産経新聞論説委員の阿比留瑠比氏は、安倍氏がいなくなれば自民党も日本の政治も落ちていくと予想していたが、それが予想以上にひどいことから、逆に「その存在の大きさを改めてかみしめている」と複雑な心境をのぞかせた。やはり大切なものは失ってからその価値が分かるようだ。

では、日本政治の暗転とは、何を意味するのか。八木氏によれば、安倍氏は「自民党が左傾化してきている」と漏らしたことがあるという。また、阿比留氏は「安倍さんが自民党左傾化の防波堤の役割を果たしてきた」と述べた。

よく保守論壇は、石破政権を左派政権と指摘する。つまり政治の暗転とは左傾化である。八木氏は、安倍氏が左傾化から自民党を守った具体例を挙げた。かつての党総裁、河野洋平氏が党綱領から「憲法改正」を削除しようとした時、阻止に中心的に動き、選択的夫婦別姓の導入やLGBT理解増進法案を阻止し、皇位継承も男系男子維持に尽力してきたのは安倍氏だった。

安倍氏という左傾化の防波堤を失った自民党は、憲法改正への意欲を失い、LGBT理解増進法を成立させ、夫婦同姓制度を守る意思を示すこともしない。参議院選で自民党が苦戦するのは保守層離れを示していることは間違いない。皮肉にも党の苦境が安倍氏の存在の大きさを改めて示しているのだ。生前も没後も安倍氏叩(たた)きを続けた左派メディアは、石破政権をそれほど叩いていない。これも自民党の左傾化を示しているのではないか

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