
参院選兵庫県選挙区は改選3議席のところ13人が名乗りを上げ、熾烈(しれつ)な争いを繰り広げる。直近3回の参院選では自民党、公明党、日本維新の会が議席を分け合ってきた。今回は、保守系候補者が乱立し票を奪い合う中、前兵庫県明石市長の泉房穂が立憲民主党県連の推薦を得て革新票を固めている。残る2議席を他の候補で競い合う構図だが、既成政党への根強い不信が目立った昨秋の県知事選の余波もあり、自公維は厳しい戦いを強いられている。
「地味ではありますが、確実に仕事をしていきます」。うだる暑さの中、神戸市の繁華街で声を張り上げたのは、自民現職の加田裕之だ。首相の石破茂は公示日に応援に入り、その後も前経済安全保障担当相の高市早苗や農林水産相の小泉進次郎など名の知れた自民党議員が次々と応援に入った。ただ、街頭で演説を聞いていると耳に入ってきたのは、「もっと自民がしっかりしてほしい」とつぶやく支持者の声だった。
元首相の安倍晋三が銃弾に倒れた後、全国的に岩盤保守層の票が他党に流れる傾向にある。兵庫県も例外ではない。そんな情勢を意識してか「保守の政治家!加田裕之」と保守層に訴える場面もあった。世論調査によっては「優勢」とあるが、情勢はそれほど楽観的でないと強く否定。「前回(2019年)1位で当選と言われていたのに、ふたを開けてみれば3位だった。今回が2位当選なら、実際は4位か」と焦りを見せる。

公明は、高橋光男の再選を目指すが、危機感を募らせている。公明の「牙城」として知られていた尼崎市では、6月の市議選で党候補の得票数は4年前と比べて15%ほど減ったからだ。選挙戦初日には、代表の斉藤鉄夫が石破と共に高橋の応援でマイクを握り、「全国一の激戦区」と声をからした。「絶対に落とせない」という党としての危機感の表れだ。自民の推薦を得ており、自民支持層にも食い込みを図る。
維新はトップ当選を果たした19、22年と比べて失速気味。新人の吉平敏孝は、2児のシングルファーザーであることをアピールし、家計の負担を減らすための政策を前面に出す。
保守層の受け皿として、じわじわ支持を広げているのが参政党の藤原誠也だ。尼崎市議選では参政候補がトップ当選しており、党に勢いがある。
「情勢調査は当てにならない」と指摘するのは政治団体・NHK党の立花孝志の陣営だ。陣営によると、調査で同党支持を表明しない「隠れ」支持者が多いという。各政党や新聞・テレビを鋭く批判する立花の演説を直接聞きにくる人は多い。
歯に衣(きぬ)着せぬ立花の独特の語り口は、一部有権者に支持を広げている。立花は泉にも照準を合わせ、泉の街宣車と同じ場所で演説するなど、政策や実行力の違いをアピール。「候補者の中で斎藤元彦知事を支持しているのは私だけだと思う」と、他候補との違いを際立たせている。
(敬称略)
(参院選取材班)
(おわり)
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