
東京選挙区は、7議席を巡り32人が熾烈(しれつ)な争いを繰り広げている。そのうち、1議席は非改選の欠員分の補欠選となる。「7位当選」がそれに該当し、3年後に改選を迎える。そのため、今後の候補者調整を理由に公明党や共産党など一部政党は、当選するとしても6位以内の当選を目指している。
6期目の当選を目指す自民党現職の武見敬三は、公示を1週間後に控えた6月26日、新宿のホテルで総決起大会を開いた。73歳という年齢から「これが最後の戦いになる」と訴え、「健康長寿社会の実現」を誓った。大会には、同党政調会長の小野寺五典(いつのり)や東京都医政連委員長の尾﨑治夫が応援に駆け付けた。
2019年の参院選で武見は、最下位の約53万票で当選。選挙のたびに得票数を減らしている。堅い表情の応援弁士から次々に「政策や人柄は良いが選挙に弱い」と紹介される場面も。落選の危機がささやかれる中、連日、個人演説会を開き組織票固めに躍起になるが、党参院会長としての面子(メンツ)が保てるかどうかは微妙な情勢だ。
一方、自民が2人目に立てた新人の鈴木大地は自信の笑みを浮かべる。選挙戦序盤、五輪競泳金メダリストの鈴木は元スポーツ庁長官であることをアピールしながら「スポーツの力で国を元気に」と多摩地域を重点的に回った。7月7日には、都知事の小池百合子が鈴木の集会に姿を見せ「厳しい戦いを勝ち抜いていただきたい」と激励した。人気の高い小池が動いたことに陣営は安堵(あんど)の表情を隠せない。
参院選の「前哨戦」と位置付けられた先月の都議会議員選挙では、小池が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」は子育て支援政策を前面に掲げ、100万以上の票を獲得した。都民ファは東京選挙区で特定候補を応援しないと決めたが、100万票の行方に他陣営からも熱い視線が注がれている。
その一つの国民民主党。国政選挙では都民ファと連携してきたが、都議選でその関係にひびが入った。都民ファの反対を押し切って都議選候補者を擁立したことで、江東区や練馬区では現職の都民ファ候補が国民民主の候補に敗れた。国民民主の「裏切り」のような行為に反発する都民ファの支援者は「参院選では国民民主を応援しない」と明かした。
24年衆院選で28議席を獲得し4倍増を果たし勢いを付け、新人の牛田茉友(まゆ)と奥村祥大(よしひろ)を擁立。代表の玉木雄一郎は公示日3日夕方、JR有楽町駅前に立ち、「2人も通らないと言われるが、そんなことはない。国民民主が2議席取るくらいじゃないと日本の政治は変わらない」と声を上げた。
だが、不倫疑惑を抱える元衆院議員・山尾志桜里を参院選比例代表候補に擁立しようとした「山尾ショック」や玉木の失言が重なり、党支持率は急落。加えて、参院選直前に国会で繰り広げられた選択的夫婦別姓制度導入をめぐる議論でも、別姓に反対する保守派の票が一部離れた。
立憲民主党は、塩村文夏(あやか)と奥村政佳の再選を目指すが、党に勢いはなく「2人通るかは微妙な状況」(党関係者)にある。
既成政党に不満を抱く保守層や無党派層の受け皿となっているのが参政党だ。国民民主から参政に支持を変えたという60代女性は「参政党の夫婦別姓に明確に反対する点を支持している」と語った。
参政が立てた歌手で新人のさやは「日本人ファースト」を掲げ、SNSを重視し支持を伸ばす。5日、東武練馬駅前で「誰もが希望をもって生きられる社会をつくりたい」と枯れた声を張り、生活者の目線に立った政策の必要性を強調した。
(敬称略)
(参院選取材班)

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