
「全国の食糧基地である北海道は今、重要な位置にある。コメ不足を解消するためにも〝米どころ〟北海道にかけられる期待はとても大きい。これからも力強い農業を実現しなければならず、加えて、トランプ関税といった外圧に負けない北海道経済を確立しなければならない。そのために私をもう一度国政の場に行かせてください」
こう語るのは自民党候補で現職の岩本剛人。公示日の3日午前8時45分、札幌市内の中心部である大通(おおどおり)公園で第一声を上げた。
もう一人、自民から出馬している高橋はるみは、岩本と同じ大通公園で1時間余り遅れた午前10時に第一声を上げた。
「北海道で12年間、知事として私を育てていただいた。その恩返しとして道民が安全で安心して暮らせる地域社会をつくっていく。そのために介護医療体制を充実させ、さらに北海道の地域を活性化させるため北海道の強みを世界に発信させていきたい」。道行く市民にこう訴え掛けた。
今回の参議院北海道選挙は、岩本と高橋と立憲民主の勝部賢志の現職に、鈴木雅貴(国民民主党)、田中義人(参政党)、宮内史織(共産党)、小野寺秀(日本保守党)ら新人9人が挑む形になっている。
定数3の選挙区で、自民としては2議席確保が至上命題。過去2回の参院選挙では同党は2議席を勝ち取った。6年前の選挙では高橋が82万票に対し、岩本は45万票と大差をつけられた。「高橋はるみに比べ岩本は知名度が低い。今回も高橋に自民票が流れ過ぎると大変だ」(選対事務所)と陣営は危機感を持つ。今回の第一声で高橋と岩本の時間がずれたところにも高橋陣営の配慮が見受けられる。
岩本陣営にとって危惧するのは、そればかりではない。道内にも参政や保守など非自民の保守勢力に風が吹いているからだ。
折しも近年、北海道では外国人の森林や水源地などの土地買収、無許可開発が話題になっているが、外国資本の土地取得に対して道民は快く思っていない。そうした声に対して、参政の田中は「外国資本による企業や土地の買収、移民受け入れに制限をかける」、保守の小野寺は「安全保障上脅威となる外国勢力による不動産買収の禁止」をそれぞれ公約に掲げる。安全保障、憲法改正を含め、これらの問題に積極的に取り組んでこなかった自民に対し不満を持つ道内の〝右寄り〟の勢力が、今回の選挙では自民に見切りをつけ、参政や保守に票が流れるといわれる。
一方、立民は今回、勝部一人を擁立した。6年前の選挙では北海道教職員組合や自治労の支援を受け52万票を獲得。その構図は変わらず、立民の1議席獲得は確実視されている。
国民は33歳の元証券会社社員の鈴木を出馬させた。代表の玉木雄一郎が札幌でマイクを握り「本当に当落線上の厳しい戦いを展開している」と訴え掛けた。
自民が2議席確保できるかどうかが焦点だが、岩本の浸透度にすべて懸かっているといえる。全国的に勢力を伸ばす参政や国民の伸び次第では、自民1議席にとどまりそうだ。

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