
全国屈指の激戦区である大阪選挙区は、現職1人と新人18人が4議席を争う。
「本当に地方のことを考えているのは維新だけだ」。日本維新の会代表の吉村洋文(大阪府知事)は3日朝、大阪・ミナミの繁華街なんば駅前で第一声を上げ、大阪府・市での行財政改革の実績を強調した。
今回は、大阪市議だった岡崎太と佐々木理江の2新人を立てて臨む。佐々木は5日午前、大阪市の商業施設前での演説で、「本当に厳しいです。情勢調査にびっくりしました」と話し、他候補に後れを取っているという一部報道に危機感を募らせる場面もあった。
維新は2016年以降、2議席を維持している。ある地方議員は「全国的に維新の勢いが落ちている」と認めた上で、「今回は新人2人できちっと票の振り分けできるかが重要になる」と気を引き締めた。
一方自民党は、過去2回の衆院選で候補を擁立した府内15選挙区で全敗。党を立て直すべく参院議員の青山繁晴が府連会長に就任。党本部は当初、元知事の太田房江の擁立を進めたが府連が強く反発。太田が出馬を断念したことで、緊急公募を経て元衆院議員の柳本顕に決まった。公示まで1カ月を切った6月11日のことだった。
維新が提唱した大阪都構想に強く反対した柳本は、党内改革を約束しながら維新批判を強める。所得を上げることと「国を護(まも)る」ことを主に訴えている。
維新と自民の主導権争いの中で埋没気味なのは公明党だ。「何としても勝ち抜きたい。死に物狂いで全力で戦い抜く」。今回唯一の現職で3期目を目指す杉久武は3日、大阪駅前で、「公認会計士、税理士の経験を生かし、税制のプロとして軽減税率導入に道筋を付けた」とアピールした。
公明には強い危機感がある。昨年10月の衆院選で府内の4選挙区を失うなど、「常勝関西」での退潮傾向に歯止めがかからない。府本部の幹部は「参院選はリベンジの戦いとなるが、何が何でも勝ちたい」と語った。
大阪選挙区は過去3回、4議席のうち維新が2議席、自民と公明党が1議席ずつを獲得してきたが、この構図を参政党が崩す可能性がある。代表の神谷宗弊は4、5両日に大阪に入り、元吹田市議であることから「参政党のルーツは大阪」と強調。「大阪の人は維新と(維新創設者の)橋下徹さんに期待し、自民党ではだめだと判断した。けれども15年経(た)って、良くなっていない」と訴えた。
参政新人の宮出千慧は、維新を離党し全国比例で出馬した梅村みずほと並んで、「外国頼みのマインドをぶち壊したい」と声を枯らしながら訴えた。選挙ウオッチャーと称する40代の男性は、「3日に同じ場所で吉村さんが演説した時よりも人数も熱気も上回っている」と話した。
国民民主党新人の渡辺莉央には代表の玉木雄一郎が序盤から遊説に入り、現役世代の手取りを増やす政策を強調。立憲民主党新人の橋口玲は物価高を争点に戦うと訴え、共産党新人の清水忠史は自公維批判を強めている。
(敬称略)
(参院選取材班)

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