トップ国内【連載】信者の拠り所はどこへ 家庭連合解散問題と法人施設(4)

【連載】信者の拠り所はどこへ 家庭連合解散問題と法人施設(4)

財産清算の検討始まる

全国弁連の動き「許すな」

世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)杉並教会は年に2~3回、チャリティーバザーを開催している。通行人から見える教会施設の駐車場も会場の一部となり、毎回、近隣住民が参加。賑(にぎ)やかなお祭りのようになる。

バザー開催前、信者らは教会周辺約200軒の住宅を訪問し、物品回収を依頼するチラシを配る。

「ほとんどの場合が好意的にチラシを受け取ってくれる」

60代女性信者は訪問体験を語った。「開かれた教会として、近隣住民との関係を大切にしたい」と願い、同教会が15年前に建物を所有して移ってきて以来、心掛けているという。

ところが2022年7月、安倍晋三元首相が選挙遊説中に凶弾に倒れ、現場で逮捕された男性の母親が教団信者だと報道されると同教会にも緊張が走った。同年8月31日、自民党が「関係断絶宣言」をした直後、同教会にも迷惑電話がかかってきた。また、右翼街宣車による批判の大音響が鳴り響いた。その後、迷惑行為はすぐに収まった。

しかし、元首相銃撃事件から2年8カ月を経た今年3月、東京地方裁判所は家庭連合解散命令を決定。家庭連合は即時抗告し、東京高等裁判所で審理中だが、文化庁は解散後の財産清算手続きについての検討会を5月28日に開いた。

2023年11月の杉並教会バザーの様子=同教会提供(一部画像処理)

検討するのは、①教団の財務状況の調査②不法行為などによる被害者に対する賠償③教団の信教の自由に対する配慮――などで、秋ごろの指針の策定を目指していると報道された。藤原章夫文部科学事務次官は、同検討会に「清算人は被害者の救済と信教の自由の両方を考える必要があり、慎重かつ具体的な検討を進めてほしい」と述べたという。

だが、文科省の解散命令請求までの過程で、教団側の言い分は聴取されず、信者から集まった嘆願書も顧慮された形跡はない。一方的に進む解散に向けた手続きを見ながら日本弁護士連合会(日弁連)は2月20日、「解散命令後の清算に関する立法措置を求める意見書」を取りまとめ、立法措置で清算人の権限強化をするよう求めた。続いて同25日、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)と合同で勉強会を衆議院第2議員会館で開いている。

このような全国弁連などの立法運動について、政府の家庭連合解散命令請求に異議を唱える中山達樹弁護士は「教団のお金(資産)を全部持っていこうとする動きだ」と指摘し、許してはならないと述べた。

家庭連合には全国で約300の教会があり、教団広報によると「法人名義の拠点数(教会や研修施設)は108カ所」。名義が法人になっている各教会は、実際は草の根の信者らが居住する地域で賃貸ではなく自前の教会を持ちたいと願い、献金などをして造ったものだ。信仰を形にした思いが信者らにはある。

文科省が解散理由とした被害規模は、示談を含めて約1550人、総額204億円。09年に教団はコンプライアンス宣言をした。以降、教団が組織の在り方を改善していく姿に「希望を感じ」職員になったと話す杉並教会の男性職員(42)は、「過去、教団に至らない部分があり、多くの人を傷つけてしまった事実はあると思う。しかし、社会が大事にすることも教団は大事にしていく姿勢に変わったことも事実だ」と強調する。

さらに教会施設への思いも訴えた。

「現役信者にとって教会はただの建物ではない。信仰者にとって生きる力を補給するような場所だ。教会が無くなれば信者が路頭に迷うことになる。私たちが教会を必要としていることを知ってほしい」

(信教の自由取材班)

(終わり)

【連載】信者の拠り所はどこへ 家庭連合解散問題と法人施設(1)

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