トップ国内【連載】信者の拠り所はどこへ 家庭連合解散問題と法人施設(3)

【連載】信者の拠り所はどこへ 家庭連合解散問題と法人施設(3)

「教会没収は血も涙もない」

伊勢原 話し合って築いた新教会

新しくなった家庭連合伊勢原教会礼拝堂での礼拝=神奈川県伊勢原市(竹澤安李紗撮影)

神奈川県の中央に位置する伊勢原市。伊勢原駅の北口を出ると裾野が広い丹沢山の大山が目に入る。「大山詣(まい)り」という参拝など江戸時代から庶民信仰が根強い特徴がある地域だ。大山方面に徒歩10分の所に、白い石造りの門構えと世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)「伊勢原教会」の文字が見える。この建物は家庭連合の法人名義の施設の一つだ。

6月初旬、日曜礼拝には約60人の信者が2階の礼拝堂に集まっていた。礼拝が終わると、説教者が信者ら一人ひとりと握手し、笑顔で交流していた。約200人の信者が所属する伊勢原教会の建物は、昨年9月22日に献堂されたばかり。車の通行が多い道路に面した細長い約250平方㍍の敷地に、金融機関などが入っていた3階建ての建物を教会施設としてリフォームした。

中に入ると壁には「教会献堂基金貢献者」の掲示があった。この建物を教会にするため献金した信者家庭・個人の名札が並んでいる。教会職員の堀川富彦さん(62)は「それぞれ家庭の事情に応じて、無理のない範囲で行われた」と説明。100人以上が施設購入のために献金したという。

同教会では新たに教会をつくるため「献堂委員会」を2023年3月に発足。毎週日曜の礼拝後に会議を開き、信者代表24人の委員がどのようなリフォームを加えるかなど話し合った。

「間取りから、壁紙まで、信者の声が反映された教会だ。だからこそ私たちは格別の思い入れを持っている」と、献堂委員会の委員長として奔走した信者の山崎輝夫さん(74)は強調した。合計50回以上の会議を重ね、それぞれの案を擦り合わせたという。

この建物に移動する前の教会施設は、賃貸物件で30年以上利用していたが、見た目は廃屋のようで壁にはひびが入っていた。親が信者である2世信者の佐藤花さん(仮名、28歳)は、「入るのにも躊躇(ちゅうちょ)するような建物だった。そこと今の綺麗(きれい)な建物は、天と地の差だ」と説明。自身も献堂委員として、壁紙のデザインなど意見を出したという。実際に建物が完成した時、「すごくうれしかった」と言い、自分の意見が採用された2世が集う青年の部屋は特に「愛着がある」と笑顔で紹介してくれた。

だが、教団の解散が決定した場合、清算手続きが始まり法人の資産が凍結される。清算の間、法人名義の建物での宗教活動は原則禁止となるが、清算手続きの期間は最低でも1年、長くて数年かかると見込まれている。その間、売却されるかどうか、清算人の判断が下されるまで、教会の信者たちは宗教活動が制限される。

佐藤さんは「青年部屋に2世らが昼食で集まるようになり、過ごす時間が増えたので、これまで話さなかったことも話せるぐらいに距離が近づいてきた」と述べ、2世の拠(よ)り所がなくなることを考えるだけでも心苦しいと吐露。さらにこう続ける。

「教会がなくなっても別の場所で集会できるから大丈夫だと主張している人もいるが、それはとても大変だ。自分たちだけの場所でしかできないこともある。約束をしていなくてもここに来たら、時間や周囲や人数を気にせず、安心して交流したり、活動の幅が広がる。私たち信者がやっとの思いで作り上げた施設は絶対になくなってほしくない」

自らの意思で信仰を選択したという2世信者の思いは聞き届けられるのか懸念が残る。また、山崎さんも語気を強めて言った。

「献堂から1年も経(た)たないうちにこの施設が使用できなくなって売却されるとしたら、それは現場にいる信者の声を一切無視した血も涙もない決定だ」

家庭連合伊勢原教会
家庭連合伊勢原教会=神奈川県伊勢原市(竹澤安李紗撮影)

(信教の自由取材班)

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