トップ国内【連載】終わらぬディプログラミング(下) 仲間を売る「踏み絵」させ脱会見極め 「リハビリ」で家庭連合敵視

【連載】終わらぬディプログラミング(下) 仲間を売る「踏み絵」させ脱会見極め 「リハビリ」で家庭連合敵視

主に世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)信者を標的にしたディプログラミング(拉致監禁・強制棄教)は、拘束した信者が信仰を捨てると表明しても終わらない。脱会を見極めるため、知り合いの信者の情報を提出させたり、拉致監禁に協力させたりするなどの「踏み絵」を行うことが知られている。

拉致監禁によるディプログラミングの被害を訴えるパネル展=3月-19-日、神奈川県横浜市(宇野泰弘撮影)

そのようにして入手された情報から、ディプログラマー(脱会屋)に協力する弁護士などが信者の親に拉致監禁を勧めていることも、ディプログラミングが芋づる式に起きる要因の一つだ。脱会した元信者が信者仲間の親に働き掛けることも珍しくない。

拉致監禁に関わった親子の関係修復に取り組む民間団体「天(あめ)の八衢(やちまた)の会」の共同代表で、自身も拉致監禁の被害者である男性、猿田彦(仮名)さんは「踏み絵」について、「絶対に教団へ戻らせないための『リハビリ』だ。名簿など教会情報を盗ませたり、スパイを実行させることで、その人の認識を変えることにつなげている」と指摘する。

「踏み絵」は偽装脱会を見破るだけでなく、信者同士の関係性にも亀裂を与えていく。偽装脱会で抜け出した監禁被害者が、「踏み絵」のためにほかの信者の拉致監禁に協力し、教団信者から怒りを買って心に傷を負う事例もあった。中には反対活動に取り組む牧師になった元信者もいると言い、「対話によって当時の事態を冷静に振り返る時ではないか」と猿田彦さんはつぶやく。

世界平和統一家庭連合からの「救出」をまとめた田口民也氏の著書=東京都(石井孝秀撮影)

脱会屋グループはディプログラミングを「救出」と呼んでいるが、一人に留(とど)めず、連鎖的に実行することを推奨する。元家庭連合信者でクリスチャンの田口民也氏は、編著「統一協会からの救出」(1992年)の中で、教団を「真理のみことばである聖書と真の救い主なるイエス・キリストから、目をそらさせようとしている」と敵視。「救出」の必要性を強調した上で、「人々の協力があって初めて、統一協会からの救出活動はより完全なものとなる」と述べている。

実際、熱心に信仰していた信者仲間が、脱会後は反対活動に積極的となった姿を何度も見たと話す信者の証言は多い。宮城県仙台市在住の50代男性信者は、80年代に北海道で暮らしていた際、「監禁されて離教した元信者本人から、アプローチの電話がよくあった。元信者同士で勉強会もしていたようだ」と語る。

その一方で、田口氏は編著「統一協会救出とリハビリテーション」(94年)の中で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)という後遺症が「必ずといってよいほど多くの元統一協会員に」発症していると言及する。田口氏はそれを「フラッシング」と呼び、「突然、閃光のように統一協会の恐怖が心を襲う」(同著)と説明。

一例として、偶然、道端で教会員と擦れ違った際に気分が悪くなって寝込んでしまう、といった事例を紹介する。しかし、それらの現象を「なぜ起こるのか、私には分からない」と述べている。

無理やり監禁し、脱会を迫ったことで精神的苦痛を負わせた影響には触れず、田口氏は「フラッシング現象は起こるほうが良い」「心の傷がいやされてゆく過程」(同著)と主張。さらに、キリスト教会の礼拝に参加して聖書を学ぶとともに、家庭連合に対して「正面を向いて対決してゆく姿勢がどうしても必要」と強調し、クリスチャンに改宗させて敵対するように誘導していく。

PTSDの子供を抱えた親には脱会屋側の適切なケアもなく、一人で「子供を監禁した」という罪悪感を抱え、「子供より先に死ねない」と嘆く親もいる。猿田彦さんと共に活動するディプログラミングの被害者の女性で、共同代表のアメノウズメ(仮名)さんは、「拉致監禁は想像を絶する辛(つら)さ。監禁された期間には関係なく、心が大きく傷つけば、1日だとしても発症する」と自らの苦しい体験を振り返り、根絶を訴えた。

(信教の自由取材班)

【連載】終わらぬディプログラミング(上)〝芋づる式〟に起きた信者拉致 名簿盗られた家庭連合

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