トップ国内【連載】終わらぬディプログラミング(上)〝芋づる式〟に起きた信者拉致 名簿盗られた家庭連合

【連載】終わらぬディプログラミング(上)〝芋づる式〟に起きた信者拉致 名簿盗られた家庭連合

宗教をやめさせるため信者を拘束し、強引に脱会説得をする「ディプログラミング」は、国際的に人権侵害とされている。これまで、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)を敵視する一部のキリスト教牧師などが、信者の家族を通じてディプログラミングを実行。脱会した元信者によって、〝芋づる式〟に信者の拉致監禁被害が発生していった。拉致監禁が頻発した当時の現場にいた信者たちの証言から、ディプログラミング被害が増幅していった状況が浮かび上がる。(信教の自由取材班)

「信仰が奪われていく怒りと、どこに相談していいか分からない不安が常にあった」

東京都北区にある家庭連合の教会で、教会長を務める石村信一さん(61)はそう話す。石村さんは30年ほど前、足立区内の教会で若い信者をまとめる立場だった。多い時には200人以上の青年信者が在籍し、伝道などの宗教活動のほか、親睦を目的としたイベント運営にも当たっていた。「ギターを弾きながらみんなで夕食を囲んだり、月に一度は誕生会を開いて、チームで出し物を披露し合ったりと、楽しかった思い出がたくさんある」と振り返る。

だが、1992年から2001年までの間に、「うちの教会だけでも、100人近くのメンバーが監禁されたのではないか」と嘆く。

家庭連合信者の若者が拉致監禁された現場近くの通路=東京都足立区(石井孝秀撮影)

98年からは入信して間もない信者ばかりが立て続けに拉致監禁され、2年弱で少なくとも延べ18人が被害に遭った。中には教団施設のすぐ近くで連れて行かれた信者もいた。

調べてみたところ、「信者の名簿を盗まれた可能性が出てきた」のだという。監禁された場所から逃げてきた信者からの証言で、監禁場所に元信者の男性Aさんが現れ、「(信者の)リストが手に入った。これからも拉致する計画がある」「芋づる式に落ちる(脱会すること)んだよね」と語っていたことが分かった。

Aさんは1998年7月に拉致監禁され、脱会した信者だった。9月のある日、教会に誰もいない隙に上がり込んでいたようで、「教会スタッフの部屋に、Aさんからの書き置きと彼が借りていた本が置かれていた」と石村さんは語る。もしAさんが信者のリストを入手していたとすれば、「部屋にあった信者の住所を調べて、コピーか手書きで書き写すことはできたはずだ」とため息をつく。

教義に共鳴し、理想を語り合った仲間たちが次々と拉致監禁され、何も言わずに脱会していった。「本当にショックでいたたまれなかった」と顔を曇らせる石村さん。この出来事は今でも忘れられない心の痛みとして残っているという。

大阪市でも信者が芋づる式に監禁されるケースが発生した。92年ごろ、同市在住の柴田義雄さん(仮名、50代)は市内の教会で責任者をしていた。その当時、監禁されていた女性信者Bさんが戻ってきた。

無事を喜んでいたが、その後、不思議と信者が徒歩で移動中、路上で拉致される事例が多発。信者が1人になって歩いて移動するルートや時間帯が脱会屋(ディプログラマー)に筒抜けのようで、結果的に7~8人の信者が拉致監禁された。

原因が分かったのは、監禁された別の信者が脱出してきたことがきっかけだった。その信者が脱会説得を受けて反教団の集会に参加した際、「Bさんもその場にいて『救出の手助けをしてくれた』と紹介されていた」と聞いたのだ。「つまり、Bさんはスパイだった」。柴田さんは語る。

この話が教会員たちに伝わるとBさんはすぐに去ってしまった。柴田さんにとってBさんの一件は後々まで尾を引いた。94年にも監禁場所から戻ってきた女性信者がいたが、「スパイではないか」と疑心暗鬼に駆られ、ほかの信者の前で問い詰めてしまったこともあった。

柴田さんは「Bさんがどういう気持ちでやっていたのか、自分から積極的に申し出たのか、本意ではなく『踏み絵』としてやらされていたのか、もう誰にも分からない」とつぶやいた。

【連載】終わらぬディプログラミング(下)仲間を売る脱会見極め 「リハビリ」で家庭連合敵視

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