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「別姓」導入 野党三つ巴 立民 子の姓「婚姻時」に変更 維新 旧姓に「法的効力」付与 国民 戸籍の筆頭者に合わせ

国会会期末の6月22日まで残り1カ月を切った30日、選択的夫婦別姓制度を巡り野党3党が法案を提出し、衆院法務委員会で審議が始まった。別姓導入で戸籍制度の具体性を明示しない立憲民主、別姓導入と戸籍制度維持の国民民主、旧姓の法的効力で戸籍制度維持の日本維新の会―3党別々に提出した理由の一つに、戸籍制度に対する姿勢の違いがある。(竹澤安李紗)

 別姓を巡る審議は28年ぶり。立民は同制度導入に対して、並々ならぬ思いがある。昨年11月、同制度を議論する衆院法務委員会の委員長ポストを獲得した立民の野田佳彦代表は「決着をつける」と意気込んだ。

 「自分の姓を選べる時代へ」とアピールする立民の法案は、子供の姓を決めるタイミングを「婚姻時」とした。2022年に野党共同で提出した法案の「子供の出生時」から変更したことになる。これまで自民党など保守層から、子の姓を出生時に決めることは「きょうだいで姓が異なる」可能性があり、子供への影響から問題があると指摘されていた。

 こうした指摘は1996年からあったが、昨年まで立民は「出生時」の決定を崩さなかった。理由は、婚姻時の決定で起こり得る精神的苦痛に配慮するとしていた。一転して婚姻時と決めたものの、説明はされていない。婚姻時の決定ではきょうだいの姓は片方に統一することになる。

 立民が柔軟な姿勢を見せたのは、そもそも国民や維新の賛同を得るためだった。4月中旬、立民が与野党に連携を呼び掛けるも、各党の立場に隔たりがあり失敗に終わった。

 一方、公約で選択的夫婦別姓制度の導入を掲げている国民民主は、「保守層にも納得してもらえる」(浜口誠政調会長)と与野党に賛同を求めている。玉木雄一郎代表は、「同一戸籍同一氏」的形式の維持を目指すと説明した。内容は、婚姻時に戸籍の筆頭者を定め、子供の姓は筆頭者に合わせるというもの。参院選で支持拡大を狙う国民だが、支持母体「連合」の圧力を受けつつ、保守層も取り込もうという狙いが透けて見える。

 「戸籍の筆頭者」とは、現行の戸籍で最初に記載される人物を指す。筆頭者は「氏」と「名」が載り、姓を改めた配偶者と未婚の子は「名」のみ記載されている。現在の戸籍システムは戸籍の筆頭者を索引にして、家族単位で統合するが、別姓になれば戸籍の夫と妻はそれぞれ婚姻前の「氏」と「名」が記載される。索引の見出しとなる「戸籍筆頭者」の決め方が明記されていない22年の野党案に対し、自民の山下貴司衆院議員は2月26日の予算委員会の質疑で「戸籍を個人ごとに分解する」ことにもなりかねないと懸念を示した。

 保守層からは「戸籍制度の破壊につながるのでは」と批判の声がSNSを中心に噴出した。国民はこれらの批判をかわすため「戸籍の筆頭者」を持ち出した可能性がある。国民は現行の戸籍制度の公証機能を損なわない形での選択的夫婦別姓制度導入を図る。

 他方、昨年10月の衆院選の公約で「旧姓に法的拘束力を持たせる形での選択的夫婦別姓の推進」を掲げた維新は、現行の戸籍制度の維持をうたい、別姓推進派と一線を画す。青柳仁士(ひとし)政調会長は「同一戸籍同一氏という制度は原則維持。戸籍制度は変わらない」と表明。維新は19日、旧姓使用を拡大する法案を提出。婚姻前の姓を通称として戸籍に記載し法的効力を与えるとした。パスポートや住民票などで旧姓を単独で使えるようにするもので、旧姓拡大を支持する自民の一部議員と同じ方針だ。

 戸籍維持の姿勢を明確に表明する国民と維新は、自民との連携をもくろむ。ただ、自民党が今国会での法案提出を見送る方針を固めたことで、法案が成立する見込みは低いとみられる。

 女性の立場から、結婚時にどちらか一方の姓に合わせることに喜びを感じるとの声を記者は多く聞く。通名使用の手段もあるのに、別姓の選択肢が増えることで、結婚前に二人の関係にひびが入らないか心配だ。

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