辛うじて過半数維持
「自民大敗」の見出しを打った週刊現代(5月12日号)の記事、まるで7月に予定されている参院選で自公与党が過半数割れでもしそうな印象を与える。だが記事はそうは言ってない。大負けすると言っているだけだ。過半数割れと早とちりしたとすれば、読む者の願望が反映したのかもしれない。それほど石破自公政権の評判が悪い。
参院選まで2カ月余りに迫り、そろそろメディアは予測記事を出したがるが、この段階では各選挙区の優勢劣勢の状況をざっと眺めただけで終わる。これに一喜一憂するのは立候補予定者とその関係者だけだろう。その一般読者にとって面白くない記事をどう読ませるかが編集部の腕だが、政局を絡ませると俄然(がぜん)興味を引くようになる。
同誌は記事冒頭で「ポスト石破」の動きを伝えた。参院選の結果次第では、国民民主党を引き込んで自公国連立で同党の玉木雄一郎代表を首相に押し上げる「可能性」があると予測する政治ジャーナリストの声を載せた。それで「石破と玉木、日本人はどちらを選ぶのか?」という見出しを付けているわけだ。だが、それだけでは面白くもなんともない。
参議院議員の任期は6年。定数は248議席でその半数の124議席が改選となる。現在「自公の非改選議席数は75なので、最低でも50議席を確保する必要がある」わけだが、同誌の予測数字は自民党は改選議席数52の内、選挙区で「29」比例区で「12」の計「41」しか取れず、非改選議席62と合わせて参院での勢力は「103」。公明党が非改選合わせて計「25」議席になると見て、自公で「128」議席。辛うじて過半数を超えると予測した。
直近の“変数”含まず
だが、この予測は4月末時点の数字で、この間、国会議員諸氏はなかなか“やらかして”いる。記事にはこの“変数”が織り込まれていない。まず勢いに乗っている国民民主党で「独身と偽って名前も職業も全部ウソ」をついて不倫していた議員がいた。平岩征樹衆院議員(45)だ。同誌は「国民民主議員のゲス不倫」を載せた。
かつて玉木代表の不倫騒動があっただけに、またか、と思われたが、しかし、平岩氏の不倫は国会議員になる前の話だった。大阪府貝塚市議の時にマッチングアプリで出会った女性に「独身」と偽って付き合っていたというものである。とはいえ、平岩氏を擁立する段階で「身体検査」が甘かったと言われれば、国民民主としても言い訳しにくいだろう。
“やらかし”はこれだけではない。「裏金問題」で綱紀粛正したはずの自民党、その総裁が「闇献金3000万円」を受けていたと週刊文春(5月15日号)が報じた。石破茂総理総裁はまさに裏金問題を梃子(てこ)にその座に就いたのではなかったか、というものだ。
石破政権がスタートしてから、党支部への2000万円支給、若手議員への10万円商品券配布、等々、慣れてないのか金の扱いが疎漏である。その極め付きが長年パーティー券などを購入していた支援者の記録が石破氏の政治団体の収支報告書に記載されていない“闇献金”の疑いがあるというこの記事だ。
出るか文春の第2弾
石破事務所は同誌の書面での質問に対して、「政治資金については、法令に従い、適正に処理し、その収支を報告しているところです」と回答している。石破首相もメディアの取材に対して、「週刊誌報道にあるような事実は全くございません。私は全く覚えがありません。秘書にも確認をしましたが、全くそのような事実はございません」と、よほど自信があるのだろうか、きっぱりと否定した。
真相はどうなのか。同誌はこの支援者から詳細な「告白」を聞き、取材を重ねた上に、証拠書類のようなものまで添えて記事にしている。それを自信満々に「私は全く覚えがありません」と言い切るなら、この支援者が架空の話をしているということになる。
参院選で「大敗」するよりも前に、闇献金問題で自身の進退が極まるようなことはないのだろうか。それともこれは選挙前の情報戦、ネガキャンの一環で、文春がそれに乗っただけなのか。文春は第2弾があるのなら、もったいぶらずに早く出した方がいい。(岩崎 哲)