トップ国内ディプログラミング実行者、裁判に影響 家庭連合解散請求に広がる ディプログラミングの闇(8)

ディプログラミング実行者、裁判に影響 家庭連合解散請求に広がる ディプログラミングの闇(8)

家庭連合信者は偏見の被害者

寄稿 東京キリスト教神学研究所幹事・中川 晴久(下)

東京キリスト教神学研究所幹事・中川 晴久

ディプログラミングの問題は、日本の精神医療の構造的歪(ゆが)みと密接に結び付いている。佐藤光展(みつのぶ)著『精神医療ダークサイド』(講談社現代新書)や米田倫康(のりやす)著『精神医療ビジネスの闇』(北新宿出版)などの文献によれば、社会的に「問題」とされた個人を拉致・収容・監禁する慣行が、法的監視の欠如の中で黙認されてきた。

この構造は、ディプログラミングの実践者にとって、宗教信者に対する強制的な思想改造を正当化する土壌を提供した。佛蓮宗が所有する佛祥(ぶっしょう)院という民間収容施設が、こうした行為の舞台となった例も存在する。

さらに深刻なのは、メディア、警察、検察、裁判所が、オウム真理教をテロリスト集団と見なす中で、ディプログラミングの行為に目を閉ざしたことだ。オウム事件が国家的な危機と位置付けられた結果、拉致監禁に関与した者たちの行為は不問に付され、法的・倫理的責任が追及されなかった。この黙認は、実践者たちに「免罪符」を与え、さらなる行為の正当化を助長した可能性がある。公安当局との暗黙の協力関係が存在した可能性も否定できない。

オウム真理教の機関紙『理想社会12号』(1992年11月5日発刊)では、多数のディプログラミング被害の訴えに加え、弁護士やマスコミが違法行為を支援していると訴えている。

時系列から、もともと統一教会をターゲットにしていたディプログラミング・ネットワークが、オウムの信者に対して同様の手法を適用したと考えられる。オウムに対する社会的な不安が高まる中で、家庭連合はオウムと重ねられてプロパガンダされ、家庭連合に対する偏見を増幅した。

オウムは坂本堤弁護士一家殺害(1989年)やサリン散布などの破壊的行為を実行したが、家庭連合は60年間で刑事事件が皆無であり、迫害を受けながら平和的対応をした。

家庭連合は「コンプライアンス宣言」をした2009年以降は特に改善努力を進めてきた。両者は本質的に異なるが、ディプログラミングの実践者は「オウムと家庭連合は同等」とする言説を流布し続け、自身の行為を正当化した。このプロパガンダは、「統一教会は捕まらないようにうまくやっているからオウムよりもなお悪質だ」という非論理的な論理に依拠している。家庭連合の信者たちは、こうした偏見の被害者として不当な迫害を受けてきた。世間に流布されているこの手のプロパガンダが裁判所の判断にも影響を与えたのではないかと疑っている。

ディプログラミングの実行者は、地下鉄サリン事件を目の当たりにした際、自身の行為が教団の反応を刺激した可能性を自省すべきだった。拉致監禁や強制的な思想改造は、対象者の心に深いトラウマを残し、予期せぬ反発を引き起こす危険性を孕(はら)む。そうであれば、この危険性を認識し、こうした手法を「禁じ手」として封印する倫理的判断が求められた。しかし、事件後の黙認を背景に、ディプログラミング実行者たちは無反省に活動を継続し、倫理的・法的枠組みを超えた行動を正当化した。

オウム事件から30年、ディプログラミングの問題は依然として闇に葬られたままだ。国家的な危機下での黙認は状況の特殊性ゆえに理解される側面もあるかもしれないが、その後の無秩序な行為の放置は許されない。ディプログラミングは個人の自由と尊厳を侵害するだけでなく、社会全体に深刻な影響を及ぼす。家庭連合への不当なプロパガンダもまた、この問題の延長線上にある。

30年前の悲劇を繰り返さないために、私たちはディプログラミングの闇に光を当てる勇気を持つべきだ。検証なき黙認は、さらなる不正義を生む。今こそ、過去の教訓を未来に活(い)かすための行動を起こす時だ。

(おわり)

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