監禁で断絶された「絆」取り戻す
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世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の信者で、20代の時に親族らから拉致監禁を経験した鈿女(うずめ)さん(仮名、50代女性)は親子の和解に取り組む民間団体「天(あめ)の八衢(やちまた)の会」の共同代表として活動している。
鈿女さんはマンションの一室に閉じ込められた際、「親が拉致監禁をするはずがない」と最後まで信じていたが、船田武雄牧師(故人)が姿を見せたことで「騙(だま)されていた」と被害を確信。逃げ出した数日後、親に連絡をした際「もう一度会って話し合いがしたい」と言われたが、「また拉致監禁される」という恐怖から会えなかった。
それ以来、親を訪問するも門前払いにされ、対話は不可能になり、実家が引っ越した後はいよいよ行方も分からなくなってしまった。それから20年がたったある日、家族からの突然の連絡で既に父親が亡くなっていたことを知らされた。鈿女さんは「父親と和解をしたかったが叶(かな)わないまま最期を迎えた。私と同じように悔いを残さないでほしい」と胸の内を述べた。
同会共同代表の猿田彦さん(仮名、53歳男性)は、「子供を脱会させた後、監禁指導をした牧師が継続して親子関係をサポートしてくれるという期待が家族側にある」が、実際には何もしてくれないと指摘。その理由を、「親が高額な料金を支払うことで、牧師や脱会屋は協力をするが、その後は金銭のやりとりがなくなるため」と分析する。
同会に寄せられる相談には、「親に会いに帰省することができない」「電話で話すことができない」などがあるという。中には「拉致監禁をしたことは間違いだと思うが、その準備期間、強烈な教団に関する真偽不明の悪情報を刷り込ませられたため、今は娘を娘として見ることができない」と涙を流して話す親もいる。
2012年ごろから拉致監禁問題の解決に向けて活動していたという猿田彦さんは、「自身の親と和解してからは、より親子の和解のため尽力するようになった」と話す。
和解に至るきっかけは父親の入院だった。「人生を考え直していた母親と向き合うことで、徐々に拉致監禁当時の話をしてくれるようになった」という。母親は当時の状況をこう説明した。
「『あなたが親として子育てに失敗したから息子は悪い宗教に入った。早く閉じ込めないと大変なことになる』と日本基督教団の牧師に責められ、どうしたらよいか分からず、何も考えることができなくなってしまっていた」
拉致監禁によるディプログラミング後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)をはじめ精神的な後遺症を患うケースが多い。猿田彦さんの母親は、子供がPTSDになる可能性があることを知っていたら「絶対に拉致監禁しなかった」と答えたという。
拉致監禁後に親子関係を気に掛けてくれる人がいない現状について、母親は「親子の和解のためには子供から声を掛けてほしい。(拉致監禁を)やってしまった親からはとても言い出せない」と話す。そして猿田彦さんと和解した現在は、「あの親子の仲を取り持ってほしい」「気になっている家を訪ねてほしい」と猿田彦さんへ相談を持ち掛け、一緒に親子の関係修復に取り組んでいる。
天の八衢の会「天の八衢」とは、神話に登場する「分かれ道」を意味する。そこへ道案内として登場するのが猿田彦大神。家庭連合信徒である猿田彦氏は、拉致監禁により対立した親子関係を和解に導きたいという思いで会を立ち上げた。現在は、親子の和解のため相談に応じたり、拉致監禁が原因で自ら命を絶った親や信者のお墓を訪ね、慰霊するなどの活動をしている。
嘘をつく牧師に疑問
「これまで拉致監禁をした親だけでなく、指導したキリスト教牧師とも対話する機会があった。その中で、子供との関係が断絶してしまうほどの嘘(うそ)をついてまで拉致監禁をする親の姿、本来の役割ではない『嘘をつくことを促す』牧師の姿に疑問を感じるようになった。その背後には、巧妙に仕組み化され、ネットワーク化されてきたディプログラミングの闇があることを目の当たりにしてきた」
猿田彦さんはこう話し、「今でも拉致監禁の被害者とその親の絆が分断されたままの家庭が多い。これを救うのが私たち八衢の会の使命」と語気を強めた。
(信教の自由取材班)
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