
東京地方裁判所が世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)解散命令の根拠とした裁判案件(和解を含む)の「被害申告者」の中には、拉致監禁・棄教強要を伴う「ディプログラミング」の被害者が多数存在することが明らかになっている。(信教の自由取材班)
監禁・脱会・弁護士紹介の流れ
文科省が地裁に提出した陳述書には、非人道的な拉致監禁・棄教強要の状況が生々しく描かれているものが複数含まれている。このほど本紙は、拉致監禁被害に遭った元信者とその家族による陳述書への反証を書いた現役信者から三つの陳述書について詳細な情報を得た。元信者やプロの脱会屋、キリスト教牧師、弁護士らの連携で、棄教させられた上で、踏み絵のように教団を訴える流れができていることが分かる。
このうち、長野県在住の元信者、船橋幸恵さん(仮名)は、2010年末に県内の実家に帰省し、家族から頼まれて蔵の掃除をしていたところ、蔵の外から鍵を掛けられ、閉じ込められた状態で脱会させられた。
「食事などの生活環境は劣悪ではなかった」と書かれているが、蔵は家から離れた場所にある貯蔵庫であり、生活する空間ではない。ここで、教団の批判本を読むよう強要された。
拉致監禁されたきっかけは、船橋さんの妹が既に脱会している人に接触したことだ。陳述書で「支援者」と書かれているプロの脱会屋を紹介してもらった。
反証を書いた長野県在住の現役信者によると、船橋さんは喜んで教会に通い、職場の同僚など3人を教会に誘っていた。それだけに、「強制的な脱会説得を受けたのは間違いない」と話す。
何百人もの信者を強制脱会させた川崎経子牧師(故人)が長く所長を務めた「いのちの家」(長野県小諸市)の関与が濃厚だという。女性を脱会させるために妹が「会社を退職」したと書かれている。親族を先に覚悟を決めさせ、後に引けないようにするのが脱会屋の常套(じょうとう)手段だ。
船橋さんは脱会を決めると、「支援者から東京の山口広弁護士を紹介」してもらった。東京で「旧統一教会との返金交渉」をし、「脱会のための通知書を送って」もらった。その後、船橋さんは、入信に至った3人に対しても「支援者」を通じて脱会させたと書いている。
別の陳述書には、両親が信者の娘を拉致監禁して脱会させた経緯がつづられている。東京在住のこの父母は、脱会した元信者からの情報として、1988年に「川崎経子牧師から連絡を受け、娘が統一教会に入信していることを知った」。
両親が、都内のホテルの一室から逃げ出さないように複数で監視した上で脱会させた。牧師からは「話すだけでは洗脳が解けないから慎重にやるように」と言われ、父親は仕事を犠牲にして「十分な時間を確保」した。その際、「親に責任がある」と責められ、娘を脱会させるために半年以上、教会に通ったことも明らかにしている。
娘は脱会の1年後、牧師からの誘いで「統一教会に入ってしまった家族を脱会させたいと思っている人や統一教会から脱会しようとしている人たちの相談に乗り」、助言するなど「重要な役割」を担うまでになった。
背教者の主張を解散理由に
母親を拉致監禁して脱会させた男性による陳述書も紛れ込んでいる。この男性は、信者の母親を強引に連れ出し、親戚の協力を得て娘を3カ月もの間、ホテルにこもらせて脱会させた。
母の勧めで男性の妹が後から入信した。それを良く思わなかった妹の夫はまず、神戸に住む親戚のつてで「脱会のカウンセリング」をしているという牧師を紹介してもらい、妹を脱会させた。
間もなくして、連絡が取れなくなった妹に会わせるという名目で「覚悟を決めて、抵抗する母を強引に(東京から)大阪に連れて」行った。大阪のビジネスホテルでは2週間程度、逃げ出さないように複数人で監視した。母親は、東京に帰って「カウンセリング」を受けて脱会した後、キリスト教の洗礼を受けている。
いずれのケースも、脱会した後、牧師の教会の信者になるか、現役信者を脱会させる活動に加担する「背教者」となっている。「ディプログラミング」により教団に憎しみを抱かされた「背教者」の主張は信用性がなく、裁判で採用されないことは世界的な常識であることは、宗教学者の大田俊寛氏が本紙インタビューで指摘している。ある教団職員は「文科省職員は、拉致監禁という犯罪行為を家庭連合信者の信教の自由の侵害と見ずに、解散のための証拠としたことはあまりに常識を逸している」と嘆いた。
ディプログラミング(Deprogramming)
「カルトによって信者に植え付けられた思考プログラムを解除する」という意味。これを専門的に行う「ディプログラマー」は、「カルト信者」が「洗脳されている」のであれば、「脱洗脳」されなければならないと主張する。
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