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家庭連合への解散命令請求 暗殺犯の「動機」地裁決定に

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25日、家庭連合本部で記者会見を行った教団代理人の福本修也弁護士(教団配信動画より)

「民法上の不法行為」を宗教法人の解散要件にした初の文部科学省による解散命令請求が世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に対して行われ、東京地方裁判所は請求通りに解散決定をした。安倍晋三元首相暗殺事件を起こした被告の犯行動機と、結果的に一つとなった地裁決定までの展開には民主主義を破壊する人民裁判的な危うさが潜んでいる。(信教の自由取材班)

一夜の解釈変更 「民法」時効なく

被害急減でも被害「推認」

東京地裁の決定を受けて25日午後7時から東京・渋谷の家庭連合本部で行われた記者会見で、教団の田中富広会長は「解散請求の理由とされた不法行為の組織性、悪質性、継続性のうち、目に見えて明らかに継続性はない」と強調した。

教団代理人の福本修也弁護士は、献金など金銭トラブルを巡る裁判件数が「コンプライアンス宣言」(2009年)の後に激減したことを、フリップ図を示しながら説明した。同宣言以前に判決に至った裁判件数は165件、以後は4件。16年3月からは約7年にわたり0件だ。

地裁決定では同宣言以前について「類例のない膨大な規模の被害」と表現し、同宣言後については「その被害は縮小傾向にあるものの、近時まで途切れることなく続いており、なお看過できない程度の規模の被害が生じているということができる」などと推測した。

だが、「旧統一教会対策法」と呼称された不当寄附勧誘防止法が施行して2年を経るが、「霊感等による知見を用いた告知」など6項目の禁止事項に家庭連合が問われたケースは0件だ。このような改善を認めてしまうと継続性はないことになり、解散命令を出せなくなる――地裁決定は牽強(けんきょう)付会な言い回しで家庭連合の主張を退けている。

もともと解散決定のきっかけは、2022年7月の暗殺事件だ。現行犯逮捕された山上徹也被告の犯行動機について、母親が入信した家庭連合への恨みから教団に近いと思った安倍氏を狙ったという警察情報がマスコミに流れ、家庭連合に対し空前の批判報道が続いた。

選挙中の事件であり、過熱した報道が教団と政治の「接点」に集中すると、当時の岸田文雄首相は自民党総裁として同党と教団の関係断絶をアピール。野党は関係断絶の“踏み絵”を踏ませる追及を行い、解散命令請求に誘導した。

だが、法人として刑事罰のない家庭連合は解散の対象にならないと文科省は見解を示しており、事件から3カ月後の10月14日に閣議決定した答弁書でも、宗教法人法81条第1項、第2項の解散命令に当たらないと判断した。18日まで岸田氏は国会答弁で解散命令請求の要件に「民法の不法行為は入らない」としていたが、19日に突然「民法上の不法行為を含める」と閣議決定と異なる答弁をした。信教の自由に関わる問題を密室で一夜で変更した。これを受けて「不法行為の組織性、悪質性、継続性」が解散理由として争われることになった。

記者会見した田中氏は、民法の不法行為については「時効がない」と指摘する。文科省は家庭連合への解散請求で1980年にまでさかのぼって「被害」に触れた。ほとんどが30年余り前の古いものだ。過去数十年の事案に対しても文科省は宗教法人に対し解散命令請求のための質問権を行使する可能性を持ったことは、権力の肥大化と乱用が懸念される。世論の影響などで時代と共に「公共の福祉」「社会通念」などは変化し、時の政権の恣意(しい)的な解釈で変わり得るものだ。

決定は信者が経営する企業の販売行為が問題化した霊感商法、特定商取引法違反で逮捕者が出た新生事件などにも多く記述しているが、民事訴訟での判決や和解による解決、刑罰などによって法的けじめはついた。コンプライアンス宣言後は殆(ほとん)ど問題は生じなくなった。が、過去をさかのぼり「被害」対象を増やし、地裁決議は80年代からの長さを含めて同宣言後の被害を「推認」し、解散を決定した。

しかし、銃撃事件後に教団を解散させようとすることは、刑期を終えて出所した人を銃撃事件に手を下したわけでもないのに捕らえ、以前の判決は甘かった、まだ何かしているのではないかと裁判に掛けて、新たに死刑判決を言い渡したようなものだ。

しかも、宗教審議会、質問権行使、解散命令請求を受けた裁判所での審理の全てが非公開で事が運ぶ。福本氏は、文科省が証拠を捏造(ねつぞう)した事実は審理中の反対尋問で露呈したことを指摘した。が、地裁決定は文科省の証拠捏造を無視した。

宗教団体への憎悪から元首相を殺害した被告の犯行動機に飛び付いた過剰なバッシングが、一夜の法解釈変更による「民事初」のケースを生んだ。法手続きを添えているものの人民裁判的であり、非公開で一方的に宗教法人の解散請求は進められている。

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