
文部科学省が東京地方裁判所に請求した世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に対する、解散命令の証拠とした陳述書について、署名した本人から「書いていない」「事実と違う」などの情報が本紙に寄せられ、名義人本人に面会取材した。(信教の自由取材班)
取材に応じたのは、1月21日付の本紙で報じた、東京都練馬区在住の現役女性信者、足立真由美さん(仮名)の実母、松島春代さん(仮名、70代)。松島さんは足立さんから自分名義の陳述書が文科省によって提出されたことを知らされたといい、「書いていない」と断言した。また、陳述書の署名については自身の字だというが、「サインしたという記憶はない」上に、陳述書の文面も「読んだことがなく、確認を求められたこともない」と話した。
松島さんの夫は、娘の足立さんの誘いで教団の行事に参加し、献金などもしていた。しかし、やがて教団側に対し不信感を持つようになり、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の山口広弁護士を代理人に、献金の返還を求める請求を行った。解決金の支払いは既に完了している。
松島春代さん名義の陳述書は、松島さんの夫が献金返還を請求する際に2022年10月、教団へ送られた書面の添付資料の一つだった。松島さんの「供述」が書面化されたものということになっており、教団が夫に対して返金するよう松島さんも教団に求めたことになっていた。
今回娘の足立さんを通じて、松島さんが初めて自分名義の陳述書の内容を確認すると、自身の認識と異なる点が幾つかあった。
もともと松島さんは娘の足立さんの信仰に対して、反対の立場だ。教団の多額の献金や合同結婚式などを疑問視し、「統一教会には悪いイメージしかない」と述べる。娘の意思を尊重したい気持ちはあるものの、周囲や親族に相談することもできず、「とても傷ついてきた」と心境を吐露した。
だが一方で、夫の求める献金の返還に対しては中立の立場を取る。その理由は「一度は納得して出したお金を、今さら返してもらおうというのはおかしい」と感じたためで、その責任を教団側に問うやり方には難色を示していた。
松島さんによると、陳述書に記されていた署名については、もしサインしたとすれば自宅の可能性が高いが、署名部分だけ空白になった書類を差し出された記憶も、夫からサインを求められた記憶もなかった。さらに「山口弁護士に会ったこともなければ、事務所に行ったこともない」と話している。
これらの証言を踏まえると、全国弁連から資料を入手した文科省が、資料内容の事実調査や本人への確認といったファクトチェックを怠ったまま教団解散のための「被害者の陳述書」として、証拠に加えていた可能性が出てくる。公判ではない非訟事件の手続きを巡る“闇”は深そうだ。
【スクープ第2弾】知らぬ間に解散の証拠に 「確認ない」 怒る現役信者 別宗教の元信者も紛れ込む 家庭連合解散命令請求 文科省陳述書捏造疑惑