トップ国内言論空間ひっくり返す判決に 鈴木エイト氏に勝訴 【連載】信教の自由守る「死闘」 後藤徹さん解放17年(中)

言論空間ひっくり返す判決に 鈴木エイト氏に勝訴 【連載】信教の自由守る「死闘」 後藤徹さん解放17年(中)

判決後に行われた報告会。右から徳永信一弁護士、全国拉致監禁・強制改宗被害者の会代表の後藤徹氏、中山達樹弁護士=1月31日午後、東京都千代田区(石井孝秀撮影)

「今回、鈴木エイト氏の発言が名誉毀損(きそん)と認められた。(拉致監禁は)甚大なる人権侵害だと、裁判を通じて多くの方に知っていただきたい」

「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」代表の後藤徹氏(61)は1月31日、裁判の報告会で勝利を伝えると、集まった支援者らから拍手を送られた。後藤氏の受けた拉致監禁被害を「引きこもり」と揶揄(やゆ)してきたジャーナリストの鈴木エイト氏を2023年10月、東京地方裁判所に提訴してから、約1年4カ月後の勝利だった。

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鈴木氏や全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の弁護士らは、強制棄教を目的とした拉致監禁を宗教迫害と認めていない。信者を救うための家族による「保護説得」であり、教団や信者が人権侵害を訴えることは、教団解散を回避するための「最後のあがき」と主張している。

原告代理人の徳永信一弁護士は、メディアが反教団側の声を取り上げるばかりで、強制棄教に関する「真実の声を拾おうとしなかった」と指摘。その現状を踏まえ、今回の判決は「嘘(うそ)で固められた日本の言論空間をひっくり返す、重要なスタートになり得る」と強調した。

12年5カ月もの間、拉致監禁された後藤氏は2011年1月、自身の監禁に関与した親族やキリスト教牧師、脱会専門の活動家を相手に民事訴訟を起こした。15年9月、最高裁判決が確定し、被告側に2200万円の賠償命令が下された。だが、鈴木氏は、その裁判過程を伝えるネット記事の中で、「家族を説き伏せるためにマンションに留まり、居直った末に果てにニート化してただの“引きこもり”となった」(2013年3月13日「やや日刊カルト新聞」)と記述。判決後も同記事はネット上で公開されている。

後日、この記事に後藤氏はX(旧ツイッター)上で、「脱会強要の苦しみがどれほどのものか、彼には理解できないのか」(23年8月1日投稿)と心境を吐露した。

鈴木氏は最高裁判決が出た後も、記事やテレビ番組で後藤氏を「引きこもり」と呼び続けた。15年10月15日の「やや日刊カルト新聞」では「12年間に及ぶ引きこもり生活の末、裁判で2000万円をGETした」と記述。22年8月12日放送の日本テレビ系列の「情報ライブ ミヤネ屋」出演時には、後藤氏の裁判を「異様な熱気に裁判所が流された」とした上で、「ほぼ引きこもり状態の中、いつでも出ていけるような状態」と発言している。

後藤氏に対する誹謗(ひぼう)中傷は続く。鈴木氏は23年7月、家庭連合の2世信者たちが主催したシンポジウムに取材で訪れたが、その時の発言が物議を醸した。パネリストとして出席したノンフィクション作家の福田ますみ氏から、なぜ後藤氏を「引きこもり」と主張するのか尋ねられた際、「どうでもいいです。ご自由に受け取ってください」と回答した。その数日後、自身のXに「反社会的団体による『被害者アピール』は取り上げる価値もなく『どうでもいい』」などと投稿した。

東京地裁の判決では、こうした発言のうち15年10月15日「やや日刊カルト新聞」の記事、そして22年8月の「ミヤネ屋」出演時の発言が名誉毀損と認定された。しかし、後藤氏が「彼には理解できないのか」と非難した13年の記事や23年のシンポジウムでの発言、その後のX上での投稿は、「名誉棄損の不法行為を構成しない」と判断された。

また、後藤氏側は鈴木氏の「引きこもり」などの表現には、「監禁被害を装ってその被害を訴えている嘘つきのペテン師」とする意図が含まれていると主張したが、判決では採用されなかった。

徳永弁護士は、今回名誉毀損と認定されなかった記述や発言も含めて、控訴審で「全部取る」と意気込む。家庭連合への風当たりが強い現状で、再び拉致監禁事件が増えることを恐れる後藤氏にとって、負けられない闘いは続く。

(信教の自由取材班)

【続き】後藤氏自伝は日本版「夜と霧」 終わらぬ拉致監禁被害 【連載】信教の自由守る「死闘」 後藤さん解放17年(下)

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