
主に世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の信者を標的として行われた、拉致監禁による強制棄教の被害に遭った人々でつくる「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」代表の後藤徹氏(61)は、家族などから監禁された時の体験談や解放後の裁判経過などをまとめた自伝「死闘 監禁4536日からの生還」(創藝社)を出版した。後藤氏は監禁場所の東京都杉並区にあるマンションから解放された17年前の同じ日となる10日、自伝の出版記念講演会(主催・同会など)を同区内で開き、約300人が集まった。
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家庭連合の信仰を持つ後藤氏は、家庭連合を異端視する牧師や脱会専門の活動家の指導を受けた家族によって、31歳から44歳までの12年5カ月間、マンションの一室などに監禁された過去を持つ。講演の中で後藤氏は拉致監禁を「すべての自由が奪われる。信仰が破壊し尽くされるまで閉じ込められ続ける」と訴え、選挙の投票権を行使できなかった回数だけでも「19回」と強調した。
さらに信者の家族は、脱会強要を勧める牧師などから「マインドコントロールを自分で抜け出すのは難しい。専門家に任せるしかない」などの教育を受けると説明し、「実際は拉致監禁だが、『保護』という欺瞞(ぎまん)の言葉が使われる。そのため、犯罪行為をしているという感覚が麻痺(まひ)してしまう。ある意味で私の家族も被害者だ」と指摘した。
今回、自伝を出版したことについて、「信仰の自由というものが一体どういうものか、考えるきっかけにしてほしい」と語った。
講演会には家庭連合の田中富広会長もゲストとして招かれた。田中氏は「絶対に許せないことは、人間として絶対に切ることができない親子の情を最大限に利用されたことだ。本を読めば、『死闘』の意味がもっと違って見える」と強調。また、監禁被害者の7割は離教していることに触れ「その中で教会を訴える人が一握りだ。それ以外の人々は、親子関係を回復できたのか、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や人間関係の亀裂をどう乗り越えているのか。拉致監禁がある限り、教会に残っても残らなくても悲劇は続く」と懸念を示した。
このほか講演会には、元日本基督教団牧師で現在は独立系ユーチューバー牧師の岩本龍弘氏や徳永信一弁護士などが出席した。
講演会後、後藤氏が監禁されていた荻窪のマンション近くの公園まで、主催者と参加者らは約3キロのラリー行進を行った。後藤氏が先頭に立ち、参加者は「信教の自由と基本的人権を守ろう」「家庭連合信者に対する拉致監禁・強制棄教は犯罪だ」などのシュプレヒコールを叫んだ。

後藤氏は自らを監禁した家族、牧師、脱会活動家を相手に民事訴訟を起こし、2015年に最高裁で勝訴判決が確定。被告側に2200万円の賠償命令が下されている。