
ジャーナリストの鈴木エイト氏による「引きこもり」発言などに対し、名誉棄損であるとして「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」代表の後藤徹氏が1100万円の損害賠償を求めていた裁判の判決が31日、東京地裁であった。一場康宏裁判長は、原告側の主張する鈴木氏の発言が「名誉毀損の不法行為を構成する」と認め、鈴木氏に11万円の支払いを命じた。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者である後藤氏は、1995年9月から2008年2月の12年5カ月にわたり、強制棄教のために都内などのマンションの一室で監禁された。関与した親族と脱会活動家、キリスト教牧師を相手に民事訴訟を起こし、最高裁で15年9月に牧師らの上告が棄却され、勝訴判決が確定している。
判決によると、原告が名誉毀損を訴えた鈴木氏の五つの主張のうち、二つが後藤氏への名誉毀損として認められた。15年10月にネットメディア「やや日刊カルト新聞」で「12年間に及ぶ引きこもり生活」と書いたことと、安倍晋三元首相銃撃事件後の22年8月12日、日本テレビ系列の「情報ライブミヤネ屋」に出演した際に「ほぼ引きこもり状態」とした発言について、「原告の社会的な評価を低下させるもの」と判断。さらに15年の民事訴訟の判決確定後の発言であることから、鈴木氏側に「原告が引きこもりであると信じたことについて相当の理由があったということはできない」と結論付けた。
一方で、鈴木氏が23年8月にX(旧ツイッター)で、「反社会的団体の『被害者面でアピール』は『どうでもいい』」など、原告が求めたほかの三つについては、名誉毀損と認められなかった。
判決後、原告代理人の徳永信一弁護士は、鈴木氏の五つの主張のうち、三つが名誉毀損とされなかったことに触れ、「人権侵害に厳しい態度を取るなら、容認すべきでないという判断が十分成り立ち得る問題だ。裁判所やジャーナリストは、それくらいの覚悟を持ってやらなければならない」と強調。
後藤氏は強制棄教を目的とした拉致監禁事件について「今まで何千人も被害に遭ってきたが、まだ日本においてその事実が認知されていない。今回の勝訴を通じて、多くの人に知ってもらい、二度と日本社会で起きないようにしたい」と訴えた。原告、被告側共に控訴する方針を表明している。