
戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の言論統制などをメディアが見過ごし続けた結果、自虐的な日本人が生み出されたとして、保守系の学識経験者らでつくる「日本の真の独立を目指す有識者会議」はマスコミに対して告白し謝罪することを求めている。(豊田 剛、写真も)
「戦後GHQによる日本国民の洗脳工作に加担させられたメディアは告白・懺悔せよ:これなくして日本の真の独立はない」と題する公開シンポジウムが1月25日、都内で開かれた。
シンポジウムを主催した日本の真の独立を目指す有識者会議は昨年春、設立された。東大名誉教授の小堀桂一郎氏が議長、大阪市立大名誉教授の山下英次氏と東北大学名誉教授の田中英道氏が副議長を務める。
シンポジウムには、両副議長に加え、創設メンバーに名を連ねた元航空幕僚長の田母神俊雄氏、元陸上自衛隊陸将補の矢野義昭氏、元衆議院議員の松田学氏らが参加した。
「米民主党が言論統制を行って作り出した戦後世界の虚構がある。共産主義社会の戦後をつくろうとするOSS(戦略情報局)が日本を分裂させつぶす方向に持って行った。米左翼勢力による日本采配はメディアにも通じる。米国に媚(こ)びた報道は変えなければならない。日本の伝統・文化・社会を毅然(きぜん)として研究研鑽(けんさん)して日本の良さを世界に主張することを模索していく」
冒頭のあいさつで田中氏は会議の意義をこう強調した。
山下氏は、GHQによる洗脳工作を次のように説明している。
<終戦直後の1945年12月8日、民間情報教育局(CIE)企画課が執筆した連載記事「太平洋戦争史」(GHQ民間情報教育局提供)を在京紙に掲載させた。翌9日以降は、連載記事をドラマ仕立てにした「眞相はかうだ(こうだ)」をNHKラジオが放送した。米国の原爆投下を正当化し、南京大虐殺は真実だと演出するなど、先の大戦が侵略戦争であることを印象付けた。放送は翌年2月まで続いた。
新聞やラジオ、映画などメディアは全てGHQ傘下の民間検閲支隊(CCD)によって、徹底的な事前検閲を受けた。禁書に指定された図書も7000余ある。その一方で、こうした実態を報じる機会はほとんどなかったという。こうして日本国民のほぼ全員が洗脳された。>
シンポジウムに先立ち同会は1月6日付で、NHKの稲葉延雄会長に公開書簡を送った。
書簡では、当時のジャーナリストについて「占領下で強制されたのだから、責任はない」と理解を示しながらも、「GHQが去った後にジャーナリストとして活動した全ての人」に責任があると強調。日本の主権が回復した1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約が発効した後も洗脳工作されたことを告白せず、「日々、読者や視聴者に不作為の罪を積み上げている」ことを問題視した。
NHKの幹部、春日由三(よしかず)氏は退局後の1967年1月発行の自著「体験的放送論」(日本放送出版協会)の中で、洗脳工作に加担させられたことを告白・懺悔(ざんげ)している。しかしこれ以降、NHKはこの問題に向き合っていない。山下氏は、「GHQによる洗脳工作の実態を伝える特集を組んで報道し、何年間も続ける」ことでしか罪滅ぼしにならないと訴えた。
朝日新聞が慰安婦問題の誤報を認め、2014年8月5日と6日に当該記事を取り消す報道をしたが、「本件はそれとは比べ物にならないほどはるかに重要な問題」と山下氏は加えて指摘した。
シンポジウムでパネリストらは、トランプ米大統領が再選し、世界が動き始めたことをポジティブな動きだと評価した。田母神氏は「歴史は戦勝国がつくる」と述べ、「米国発の歴史観に毒されている現状を変える」必要性を説いた。松田氏は、グローバリズムに奉仕し一方的なプロパガンダを流したことを反省するようメディアに求めた。
メディアは現在、「知性や見識だけでなく倫理観で大きな疑義を持たれている」(山下氏)。旧ジャニーズ事務所の性加害問題やフジテレビの人権問題など、歴史認識以外でも国民の信頼を大きく損ねている。「真摯(しんし)に反省し、信頼あるメディアに脱皮せよ」というのがシンポジウム参加者の総意だ。