元衆議院議員 大泉 博子氏

世界日報創刊50年おめでとうございます。
筆者の貴紙寄稿は2024年からですが、貴紙の50年の歴史を紐解(ひもと)くと、世界政治の論客として、また、真実へのこだわりとして壮絶なまでの戦いに挑んだことを知りました。
世界の情報を中心に発信する日刊紙は、日本では稀有(けう)な存在ですが、貴紙の論調の背景には、ハンス・モーゲンソーやケネス・ウォルツを彷彿(ほうふつ)とさせる現実主義の理論が働いていると思われます。日々の国際事象を常に現実主義の理論に立ち返って報道するという姿勢を貫いてきたと言って間違いありません。
翻って、今の時代、ウクライナ侵攻やガザ攻撃のニュースからは、できれば目を背けたいのが普通の日本人の感覚ですが、現実―世界の事実は、目をつぶっていても我々の生活に降りかかってきます。世界の紛争や記憶も生々しい新型コロナのパンデミックは、インフレや将来不安を必至にし、政治や社会の一員である我々一人ひとりに処し方を迫っています。
しかも、それは、経済政策のみならず、社会政策の是非にまで及ぶ、いや、むしろ社会の変革への引き金にならんとしていることを感じます。世界の情勢の中で、若者がいかに人生を選択するか、経済的に二極化した構造の中でいかに健康で文化的な生活を守っていくか、新たな社会政策ひいては新たな社会づくりが要請されています。
先の総選挙では、筆者は勝者の無い結果だとみています。どの政党も信頼するに足りないという国民の賢い選択であり、政治カオスが到来しました。何よりも争点に欠けていたのは、世界の紛争と社会保障制度に関する議論です。経済政策の枝葉末節の部分と金権政治の問題だけに終始した日本を、今こそ創りなおす時です。
世界日報におかれましては、世界の現実を伝え、アジアの一角をなす日本にも紛争解決の役割を自覚させ、連動して安寧の社会政策の構築に貢献してほしいと思います。そのために何よりも必要な現実主義の粋を発揮されることを切に希望します。