トップ国内【連載】脅かされる信教の自由-55- 第7部 世界の中の日本の信教 解散手続きは国際基準に違反 仏人権弁護士が国連に報告 

【連載】脅かされる信教の自由-55- 第7部 世界の中の日本の信教 解散手続きは国際基準に違反 仏人権弁護士が国連に報告 

スイス・ジュネーブで国連報告書について 発表するパトリシア・デュバル弁護士(「ビ ター・ウィンター」ホームページから)

人権問題を専門とするフランスの国際弁護士パトリシア・デュバル氏は9月、国連に報告書を提出、日本政府による世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への解散命令請求は「多くの点で国際人権法に違反しており、基本的な権利・自由を保障するために日本が締結した条約を侵害するもの」として改善を求めた。

デュバル氏は、家庭連合に対する献金の返金請求などを巡る不法行為訴訟は、「拉致と強制棄教(ディプログラミング)」によって教会を離れた元信者らが起こしたものであることを指摘した上で、これらの訴訟が日本政府によって「現在係争中の教会解散手続きを開始するための根拠として使われている」ことを強調した。

国連人権規約の実施を監督する自由権規約人権委員会は、日本政府が「『公共の福祉』に基づいて宗教または信念の自由の権利を違法に制限してきた」として是正を求めてきた。委員会は勧告で、「『公共の福祉』の概念が曖昧かつ無制限」であり、「許容される範囲を超える制限を許す可能性がある」として懸念を示している。だが、デュバル氏によると、日本政府はこれらの勧告を無視し続けてきた。家庭連合の解散命令請求の根拠である宗教法人法には、「『公共の福祉』の侵害」が明記されており、「廃止されるべき」だとしている。

また、安倍晋三元首相暗殺事件を機に、「全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)の主導により、旧統一教会に対するメディアの猛攻撃が始まった」と指摘、これを受けて信者らが差別を受け、家庭内暴力を受けたり、離婚されるなどのケースが多発している。

全国弁連が「霊感商法」を盾に家庭連合を非難、それをメディアが報じ、世論が誘導されるという構図が作られた。さらには、「メディアの騒動により、日本政府は教会とのいかなる関係も断つよう圧力を受け、…教会の解散手続きを開始」したと解散命令請求に至る一連の流れを説明している。さらに、裁判所も、メディア、世論からの圧力を受けて「教会にさらに不利な判決を下す」という悪循環が繰り返されてきた。

また、解散命令請求の根拠とされている家庭連合を相手取った32件の裁判例について、①裁判所は「精神操作(メンタル・マニピュレーション)」という誤りであることがすでに証明された理論を用いた②献金勧誘行為の違法性判断のために用いた「社会的相当性」という概念は「恣意(しい)的かつ曖昧」―と指摘しており、「曖昧で差別的な概念が、…旧統一教会の伝道の権利を制限」するために利用されているとの見方を示した。

また、家庭連合の信者に対して裁判官の「推定有罪」の意識が非常に強く、信者の主張が裁判官によって無視されていると懸念を示している。

一方で、日本政府が指摘する「宗教または信念を表明する自由」への制限の根拠について、国連の人権規約では「公共の福祉」も「社会的相当性」も含まれてはいないと指摘、日本政府は「自ら署名・批准した国連規約に違反し続けている」と糾弾した。

報告書は、政府が取り組んでいる学校での「反カルト」カウンセリングについても、宗教2世に対する、拉致という暴力を伴わない新しい形の「国家主導のディプログラミング」であると非難している。この問題についても、人権規約に定める「親が自らの信仰に基づき子を教育する権利」を侵害するものとして懸念を表明した。

政府の一連の動きを見る限り、特定の教団を根絶やしにするための国家プロジェクトという感は拭えない。文部科学省による家庭連合への解散命令請求の東京地裁での非公開審理について一部メディアが報じ、元信者と現役信者の証人尋問で「現役信者らは元信者らの主張には虚偽が含まれ」ると主張したという。果たして文科省の恣意的な主張に元信者を利用していないだろうか? 国連規約違反を続けることは、国際社会から宗教弾圧国家と見なされかねないリスクをはらんでいる。(信教の自由取材班)

=第7部終わり=

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