トップ国内【連載】脅かされる信教の自由-53- 第7部 世界の中の日本の信教 脱会屋が拉致監禁を“指南”  自由奪う人権蹂躙

【連載】脅かされる信教の自由-53- 第7部 世界の中の日本の信教 脱会屋が拉致監禁を“指南”  自由奪う人権蹂躙

拉 致 監 禁 被 害 に つ い て 語 る 小 出 浩 久 氏 1 月 20 日 、 宮 崎 市 ( 豊 田 剛 撮 影

拉致された世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)信者は二つの絶望的な状況に直面する。第一にすべての自由が抑圧された監禁の現実だ。医師の小出浩久さんの場合、ドアの取っ手にチェーンが巻き付けられ、窓は固定・目張りされ、生活空間は6畳1間に限られ隣室(6畳)には見張りが常駐。テレビ、ラジオ、新聞もなく、聖書と脱会屋の宮村峻(たかし)氏が許す書物しか読めない。その閉鎖空間に宮村氏と元信者(知人を含む)が頻繁に訪ねてきて教理、教会、教祖の批判を威圧的に繰り返すのだ。

これに「家族の異常な言動、行動」が加わる。子供を拉致監禁すること自体が異常だが、密室で脱会説得が思い通り進まないと、「感情を高ぶらせ、突然、私に殴る、蹴るの暴行を加えてきた」りする。やっと結んだ約束も一夜にして反故(ほご)にする。

自分を生み育て大学まで通わせてくれた、本来なら最も頼りたい両親から人格を全否定されるのだから、その心痛は如何(いか)ほどか。このような親の異常な言動は小出氏に限ったことではない。もっとひどい仕打ちを受けた場合も少なくない。

実行するのは両親や親族だが、なぜそこまで非人道的なことができるのか。それは、宮村氏や彼と協力する松永堡智(やすとも)牧師などが信者の親族を集めて徹底的な教団批判の教育と拉致監禁の“指南”(教唆、幇助(ほうじょ))を行っていたためだ。

小出氏の両親は1984年に自ら森山諭牧師を訪ねて毎週土曜日の勉強会に参加したが中断。しかし森山牧師の下で出会った宮村氏から誘いがあって彼の勉強会に通うようになる。宮村氏は子を思う親の心を巧みに操りながら元信者を通じて「教会は反社会的団体であり、子供たちは悲惨な生活をしている」「騙(だま)された」などと一方的な情報を与え、最終的には母親が「すがりついてもこの人(宮村氏)について行こうと思った」と語るほどの信頼を得るようになる。

そのような信頼の土台の上で拉致監禁による棄教強要のやり方を“指南”していたのだ。小出氏の父親は毎日宮村氏に状況を報告・相談し、その指示に従って行動していたのだという。

小出氏自身も2度目の偽装脱会の際に松永牧師が自らの教会で毎週土曜日の午後6時から3時間行っていた「父母勉強会」の手伝いをしたことを証言している。当時、新潟、長野、山形、富山などから親族が50人も集まり、そこでは教団の活動や教理などを徹底批判するだけでなく、「監禁前や監禁中、脱会説得後に親はどのように子供に接するか、拉致から監禁、監禁後の手ほどきを解説した『対応』」まで教え込むビデオが用意されていたという。

松永牧師の講話や元信者の脱会体験談(監禁説得の“成果”)などが語られ、月に1、2回は元信者と親族の相談会もあり、そこで親族は、「統一教会は反社会的な犯罪者集団であり、そこに入った子供も犯罪者なので、子供を救出することは人の親として何より重要なことである」とハッパを掛けられ、拉致監禁しか「(子供を)救い出す」道がないことを説得される。そして、拉致監禁しかないと決意した親族には、拉致・監禁のための具体的な指導、模擬訓練を行う「2DAYS」セミナーまで行っているのだ。

宮村氏や松永牧師が教団や教祖、教理について自らの信念を語って父母の信頼を得るのは問題ない。しかし彼らは、その信頼の土台の上で、子供の人権(自由)を蹂躙(じゅうりん)し親子の絆をズタズタに切り裂く拉致監禁による棄教強要という犯罪行為を父母や親族に行わせ、犠牲となった「元信者」も次の犯罪行為に加担させている。とんでもない人権蹂躙を繁殖させていたのだ。(信教の自由取材班)

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