トップ国内日中関係悪化、原因はSNS・報道にも 日中有識者フォーラム開催

日中関係悪化、原因はSNS・報道にも 日中有識者フォーラム開催

「東京一北京フォーラム」 を終えて記者会見した工藤泰志氏 (中央)ら=5日、東京都港区 (石井孝秀撮影)
「東京一北京フォーラム」 を終えて記者会見した工藤泰志氏 (中央)ら=5日、東京都港区 (石井孝秀撮影)

谷内氏、中国SNSに疑問呈す

日中の有識者らが両国の課題を議論する「東京―北京フォーラム」が4日から2日間の日程で都内で開催された。冷え切っている日中関係を改善すべく議論が交わされた。中国による日本人への短期滞在ビザ(査証)免除措置再開など、石破茂政権の中国重視の姿勢が明らかで、対米関係への影響は避けられない情勢だ。(豊田 剛)

20年前に発足した同フォーラムの対面での開催は6年ぶり。フォーラムに先立つ2日、主催者の民間シンクタンク「言論NPO」と中国国際伝播集団が行った日中共同世論調査の結果が発表された。

相手国への印象について「良くない」「どちらかといえば良くない」と答えた中国人は前年比24・8ポイント増え、87・7%で、対日感情が悪化した。中国の印象が「良くない」とした日本人は同3・2ポイント減って、89・0%だった。

ビデオメッセージを送った中国の王毅外相=4日、東京都港区(豊田剛撮影)
ビデオメッセージを送った中国の王毅外相=4日、東京都港区(豊田剛撮影)

尖閣諸島(沖縄県石垣市)を日本が国有化した翌年の2013年以来、日中ともに相手国への印象が最低水準になった。東京電力福島第1原発の処理水放出問題などを巡る対立も背景にあるとみられる。

印象が良くない理由として、中国では前年に続き「尖閣国有化を巡る対立」が最も多かった。「一つの中国原則への(日本側の)消極的態度」や「中国侵略の歴史への謝罪・反省がないこと」、「日本メディアの中国の脅威の喧伝(けんでん)」はそれぞれ、前年を上回った。

今後の日中関係について「悪くなる」「どちらかといえば悪くなる」と答えた中国人は同34・9ポイント増の75%。日本を重要ではないとする回答は約6割に達した。調査は10月から11月にかけて行われ、日本側が全国で1000人、中国側が北京や上海など都市部で1500人から回答を得た。

この世論調査結果が、今回のフォーラムに重くのしかかった。言論NPOの工藤泰志代表は、「グローバルガバナンス(世界の統治)の重要性は国際的コンセンサスでありながら、日中の協力は重要ではないという世論の声が出てきた。これに対して何をすべきかが問われている」と危機感を示した。

福田康夫元首相(宮本雄二元駐中国大使代読)らの基調講演の後に行われたパネルディスカッションでは、谷内正太郎元国家安全保障局長、アジア開発銀行(ADB)次期総裁の神田真人前財務省財務官、中国人民銀行(中央銀行)の易綱・前総裁らが登壇。国際秩序のあり方や外交・安全保障に加え、世論調査結果について率直な意見交換をした。

谷内氏は、中国では交流サイト(SNS)などの情報に依存する人が増えていることを踏まえ、「中国で日本の姿が正しく伝わっているのかものすごく疑問だ」と述べた。これに対し中国側の識者は、訪日経験者の日本の印象は良い傾向であることを認めた上で、「対日感情の悪化は日本の政治家の発言やメディアによる一面的な報道などに原因がある」と反論した。

東京-北京フォーラムの開会式であいさつする岩屋毅外相=4日、東京都港区(豊田剛撮影)
東京-北京フォーラムの開会式であいさつする岩屋毅外相=4日、東京都港区(豊田剛撮影)

フォーラムの冒頭、両政府を代表し、岩屋毅外相があいさつ。中国の王毅・共産党政治局員兼外相はビデオメッセージを寄せた。岩屋氏は、中国による日本人への短期滞在ビザ(査証)免除措置再開を歓迎したことを踏まえ、「再び日中関係は前に進み始めた」と述べ、「できるだけ早く中国を訪問したい」との意向を示した。

石破政権は、中国人の日本訪問に必要なビザの発給要件を緩和する方向で調整に入ったという。岩屋氏は今月下旬にも中国を訪問し、王毅外相と会談する方向で調整しており、実現した際には要件緩和の決定を伝える案が浮上している。

パネルディスカッションでは、中国の登壇者から、日本の対米一辺倒からの脱却を求める発言があった。岩屋外相の訪中により日中友好ムードが演出されれば、対中強硬派のトランプ次期米大統領にとって石破政権の裏切りに映る。石破外交の先行きが不安視される。

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