Home国内【連載】脅かされる信教の自由㊹ 第6部 宗教者の声  「政府は一線を越えた」岸田氏、根拠語らず関係断絶 世界平和統一家庭連合 田中富広会長に聞く(上)

【連載】脅かされる信教の自由㊹ 第6部 宗教者の声  「政府は一線を越えた」岸田氏、根拠語らず関係断絶 世界平和統一家庭連合 田中富広会長に聞く(上)

インタビューに答える、世界平和 統一家庭連合・田中富広会長(加 藤玲和撮影)

――安倍晋三元首相銃撃事件を起こした山上徹也被告が、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に入信した母親の高額献金が犯行動機になったと供述したと報じられたが、信者の家庭状況が不幸な事件の原因とされていることをどう受け止めているか。

家庭連合の核心は、名前のごとく家庭に大きな焦点を置いている。その意味で、山上被告が家庭の環境ゆえにこのような行為に走ったとすれば、これは実に心痛い。一度も公判は開かれていないので、真の動機はまだ分からないが、家庭の事情ゆえにあのような事件を起こしたということが本当とすれば、われわれ教団としても改めるべき点があったと思う。

ただ、もう 2年5カ月経過し、報道された家庭の問題、高額献金に対する恨みが動機ということで、社会の認識は固まってしまっている。これに私は違和感を覚える。例えばお母さんの高額献金から事件が起きるまでに 20年以上も時間がある。しかも、教団は5000万円の返金をした。返金は月40万円ずつ14年間続いた。そういう経過をたどりながら、20年後に事件が起きた。本当に教団への恨みから事件に至ったのか。

しかし、教団としては見直さなければいけない領域、あるいは改めていくべき領域もたくさん見えたので、深刻に考えさせられた2年半だ。

――2年半で何を思ったか。

日本の民主主義が壊れ始めたと感じる。信教の自由そのものも崩壊し始めている。これを黙って見過ごす日本社会だということを改めて確認した。

日本では信教の自由も民主主義も与えられたもので、信教の自由とは何か、民主主義とは何か、ということを本当に議論しないままに来てしまった国だと、そのようにも感じる。

――昨年10月に政府が家庭連合に対する宗教法人解散命令を東京地裁に請求した。

不当だと考えている。また、政府はある一線を越えたとも感じる。事件が起きてから家庭連合を取り巻く風景は完全に変わった。連日のように批判的報道の嵐だったので、信徒たちは大変だったと思う。

どこがその発生源だったかといえば、一つしかない。首相の関係断絶宣言だ。岸田文雄首相(当時)が自民党総裁として、「社会的に問題が指摘されている団体とは関係を持たない」と発言した。首相としてではないが、日本の場合は自民党総裁イコール首相だ。政府の宣言のように国民には届いてしまう。

しかし、「社会的に問題が」と言いながら、何が問題かは一言も言ってない。また、元信者と面会したが、現役の信者と面会したとは聞いてない。ある意味で関係断絶する根拠を他者に委ねた。つまり自分で決断したのではなく、社会が問題があると言うなら関係を断つということだ。では、あらゆる団体にそうしているのか。そうはいかないと思う。

――かつて共同通信とのインタビューの中で、田中会長は家庭に対する配慮が足りていない部分があったという趣旨の発言をした。家庭の重要性を教える教団の中で、なぜそのような状況を生じさせてしまったと考えるか。

どの宗教も草創期はそうかもしれないが、極端に言えば出家だ。いわゆる出家を中心とした宗教的な形態から、時が経(た)って上座部仏教から大乗仏教のように変化する。家庭連合も日本の場合は宗教法人登録から60周年、最初の礼拝を行ってから65周年だ。

家庭的平和、地域的平和、国家的平和、世界的平和というビジョンを掲げながら、その核心的な部分は家庭という教えをいただいてきたが、草創期は多くの先輩たちが海外宣教に向かった。そういう信徒は、家庭より世界の平和という志を強く持って世界に旅立っていく傾向が強かった。このような傾向を持った多くの信徒たちの中では、バランスを保つことができずに家庭に歪(ゆが)みが出てきた面はあっただろう。これからは、世界平和のために注がれてきた信徒たちの情熱をより家庭や氏族に向かわせる必要がある。

それを思うと教団を変革させる重要なポイントであるので、心を痛めている人がいるなら会長として率直にお詫(わ)びしなければならないと感じたので、そういう話をした。(信教の自由取材班)

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