Home国内【連載】脅かされる信教の自由㊷ 第6部 宗教者の声  「宗教は危ない」偏見に懸念

【連載】脅かされる信教の自由㊷ 第6部 宗教者の声  「宗教は危ない」偏見に懸念

憤る在日イスラム教徒ら

名古屋市在住の自営業セイエド・サジャード・シャーさん(67)は、イスラム教のマイノリティーグループ、アフマディーヤの信者だ。日本アハマディア・ムスリム協会に所属する。

インタビューに答えるセイエド・ サジャード・シャーさん(豊田剛撮影)

出身地のパキスタンで、シャーさんは医師の家庭に生まれ育ち、将来が有望視されたが、高校のクラスでただ一人のアフマディーヤ信者として差別された。信仰による差別に困惑した親と本人は、退学という苦渋の選択をした。それだけに、宗教迫害や信教の自由に対する思いは人一倍強い。

シャーさんは1984年に日本に移住し、同協会本部が東京から名古屋に移った80年代当時から深く関わっている熱心な信者。同協会は現在は500人を超える信者を抱えるが、安倍晋三元首相銃撃事件で起きた世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への批判報道、政府による解散命令請求などの動きに懸念を強めている。

「信教の自由を奪うことはイスラムの教えにはない。賢い宗教者が政府に説明すべきだ」と訴えるシャーさんは、宗教に対してネガティブな感情が国民に広まったのは「宗教に対する教育や知識が不足しているから起こっている」との見解を示した。

また、家庭連合は経済状況に見合わない過度な献金が問題視されたが、「アフマディーヤは献金や喜捨は自由意思が前提で、献金がいくら集まってどう使われるのか、すべて記録され、明細が信者に示される。誰も横領する余地がないから、信者は安心しているし満足している」と話す。

シャーさんの紹介で、同協会日本本部長で主任宣教師のアニース・アハマド・ナディーム師が10月5日、名古屋市で開かれた家庭連合の信者らが主催した「宗教の和合・平和統一への道を築く愛知県大会」に参加した。来賓あいさつをしたナディーム師は、「信教の自由は誰にも奪う権利はない」と訴えた。

同月14日には、大阪市のホールで同様の大会、「信仰の価値を未来に紡ぐONE OSAKA10・14」が開かれた。元プロレスラーで政治家だった故アントニオ猪木氏と生前、親交のあった宗教評論家でジャーナリストのフマユン・ムガール氏は、猪木氏を彷彿(ほうふつ)させるスーツ姿に赤いショール姿で基調講演を行い、「信仰の自由、魂の自由、心の自由があって初めて人は幸せを感じる」と説いた。

イスラム教スンニ派の信仰を持つムガール氏は40年前にパキスタンから早稲田大学に留学した。在日パキスタン大使館や外務省での通訳の経験を踏まえ、イスラム文化研究会を主宰している。長年の日本での生活だが、文化の違い、習慣の違いを痛感してきた。

インタビューに応じるフマユン・ムガール氏(豊田剛撮影)
インタビューに応じるフマユン・ムガール氏(豊田剛撮影)

「今、九州にイスラム墓地を作ろうとしているが、住民の反対があって一向に許可が下りない。日本に存在するムスリム用の土葬が可能な墓地は7カ所しかなく、中国・四国・九州地方には1カ所も存在しない」

加えて、国民の多くに「イスラム教=アルカイーダ(過激派)」の固定概念があり、宗教は変だ、危ないという偏見があるのだと嘆いた。家庭連合に対する世論のバッシングについても、「マスコミによって既成概念、固定概念が作られてしまっている」ところに問題があると指摘した。

また、政府の家庭連合への解散命令請求はイスラム教徒に影響を与えるものとして懸念。「宗教について政治が判断してはいけない」と憤る。

「他の新興宗教もそうだが、すでにイスラム団体は公安からマークされている。だから、何かあったらすぐ解散命令が出される可能性は高い。もし家庭連合の解散事例ができたら、次から次へと障害が出る」

イスラム教徒が自由に信仰しにくくなるだけでなく、日本で暮らしにくくなる悪影響を心配した。

(信教の自由取材班)

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