沖縄県庁前で常日ごろ、単身で街頭演説している男性がいる。沖縄本島南部、南城市のつきしろキリスト教会の砂川竜一牧師だ。米軍基地の移設を巡る最高裁判決を守ろうとしない玉城デニー知事は辞任すべきだと主張。子供を不幸にする最大の要因は親のギャンブル依存症であるとし、22年4月の南城市議選に初出馬するなど、牧師でありながら政治に強い関心を持つ個性派だ。
砂川氏は、世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に解散命令請求が出されたことに強い怒りを覚え、声を上げる。なぜメディアがここまで家庭連合を敵視するのか。安倍晋三元首相と家庭連合の関係については、「事実関係を見聞きする限り何の不適切な関係もない」とした上で、「『統一教会が悪いから、安倍総理が暗殺された』とする世論のミスリード」があるとの認識を示した。
「旧統一教会が岸信介元首相や自民党の人たちと関係が近いのは、教祖の文鮮明師が共産主義と戦うフロントランナーだったことを見れば当然のことだ」と指摘。その上で、「神を否定する悪魔のような共産主義に真っ向から立ち向かってきた唯一の宗教団体」と家庭連合の役割を評価する。
砂川氏は11月3日、那覇市で開かれた信教の自由がテーマのシンポジウムでこう述べた。
「ヨハネによる福音書8章44節には『悪魔は嘘(うそ)つきである。悪魔は人殺しである。そして悪魔は嘘つきの父である』とある。反共活動に取り組んでいる勝共連合とそれを支える旧統一教会は悪魔の敵だ。であるならば、我々も味方していかなければならない」
砂川氏は家庭連合の改革の取り組みを評価。「過去には高額献金や霊感商法などの問題があったかもしれないが、改革をして変わっていく姿勢が何より大切だ」と述べ、「(名称が)家庭連合に変わったように、さらに神に喜ばれるような団体になっていってもらいたい」とエールを送る。
家庭連合は2009年、コンプライアンス宣言を公表して以来、経済状況に反しての過度な献金が抑制されている。砂川氏は、「家庭を大切にする団体に変わってきているにもかかわらず、その点には一切触れず、昔の悪評のみを持ち出して断罪し続ける言論空間は危うい」と感じている。
そうした中でも政府は昨年12月、被害者救済特例法を制定した。今後、家庭連合以外の宗教団体でも信者の家族から献金返還要求が出てくることが予想される。「元信者が心境の変化などで、過去の献金の返還を要求する心理は理解できなくはない。しかし、何の被害も受けていない家族や親戚が弁護士と一緒になり、被害者を装って訴え、お金を巻き上げる『被害者ビジネス』のような組織犯罪が横行し始めている」と危惧を示した。
日本の宗教法人制度については、「税制上の優遇措置などを見ても、宗教法人はある意味最も強い組織」であるが、こうした制度を逆手に取り、「あまたの脱税のための宗教団体が存在している」ことを問題視する。
「信仰とは本来、信者やその家族、地域に益をもたらすものであり、特定の組織や政治団体が得をするための会員制クラブであってはならない。法人の内部が聖域と化し、違法行為が横行しないよう、全ての宗教法人を国がある程度監査できる状態にしておくことは、今後必要ではないか」
砂川氏は宗教法人を巡る制度面の見直しも指摘した。(信教の自由取材班)