
「どんな逆境でも信念と矜持(きょうじ)を失わなかった石垣に生きる人々の不屈の精神を映画化したい」――。作家でジャーナリストの門田隆将氏が刊行したノンフィクション『尖閣1945』(産経新聞出版)の映画化プロジェクトが18日、東京都内で発表された。沖縄県・尖閣諸島を行政区域に含む石垣市の中山義隆市長は「地元でもほとんど知られていない史実を後世に残すことには大きな意義がある」と述べ、幅広い支援を呼び掛けた。(宮沢玲衣)
映画の題材となる事件は、昭和20年(1945年)7月に発生した「尖閣列島戦時遭難事件」。
米軍の上陸を恐れた沖縄県石垣島の約180人の人々を乗せて台湾に向けて出航した2隻の疎開船が米軍の攻撃を受け、1隻は沈没。もう1隻は航行不能となって漂流し、尖閣諸島の魚釣島に漂着した。かつて鰹(かつお)節の工場があって日本人が生活していたため、真水があった。ところが、上陸した人々は飢えと病に次々と倒れた。助けを求めるために決死の覚悟で若者8人が170㌔離れた石垣島にサバニ(小舟)で向かい、奇跡的に到着。遭難の情報が伝わることにより救助が行われ、生存者が救出された。
中山氏は「尖閣1945」を読んで感銘。著者の門田氏に映画化の相談を持ち掛けた。「全世界から注視されている尖閣諸島を舞台とするノンフィクション作品を映画化することの意義は大きい。尖閣で起きた史実を一人でも多くの人に知ってほしい」。そんな熱い思いを門田氏に伝えた。
「魚釣島には日本人の遺骨がたくさん眠っている。先人の魂と思いが集まっていることを日本人はあまりにも知らなさ過ぎる」。忸怩(じくじ)たる思いに駆られた門田氏は事件の関係者などを丁寧に取材し、「尖閣1945」を著した。
監督は、沖縄戦をテーマにした映画『島守の塔』で「戦争が人間に何をもたらしたのか」を描いてきた五十嵐匠監督が務める。「尖閣1945」を映画化する必要性について、「来年で戦後80年となり、戦争を知る世代がいなくなってしまう。若い人が戦争とはどういうものなのか分からなくなってしまう」と危機感を示し、戦争を後世に語り継ぎ悲劇を繰り返さないためにも映像化すると力を込めた。
配給を担当する彩プロの足立喜之さんは、「今の日本の映画界はアニメやドラマの劇場版が多い」と語る。そのため、社会性の強い作品を作るには「覚悟が必要」だが、「古いもので残っているのはこういう作品だ」とし、事なかれ主義になりがちな日本社会で映像化することの意義を伝えた。プロデューサーの菊池淳夫さんは「キャッチコピーを付けるとしたら、『日本版オッペンハイマー』」と話した。

石垣市の全面的なバックアップの下で、映画は製作される。ただ、中国が一方的に領有権を主張し、日本人でも上陸できない尖閣諸島で撮影することは事実上不可能だ。撮影場所は、地形が似ている石垣島や与那国島が候補に挙がっているという。
記者会見で中国からの横やりの心配がないかと問われると、門田氏は「日本の固有の領土を舞台とした本を書くのも映画を作るのも日本の勝手。中国にとって嫌かもしれないが、それは日本人の紛れもない歴史の話」と語気を強めた。
製作陣は、プロジェクト製作費確保のため、ふるさと納税制度の一種「ガバメントクラウドファンディング」や企業版ふるさと納税で寄付を呼び掛けている。目標額は3億円だが、門田氏は「あくまで3億円は最低額」だと語る。10億円近く集めることができればコンピューターグラフィックス(CG)などを駆使でき「間違いなく大作になる」と自信をのぞかせた。映画は来年秋から撮影が始まる予定で、2026年夏より石垣市先行で全国ロードショーとなる。






