世日フォーラム沖縄 牧野浩隆元副知事が講演
政府挙げ振興目指した歴史
沖縄県の本紙読者の会「世日フォーラム」などでつくる「日本と沖縄の未来を考えるセミナー」が10日、那覇市内で開かれ、元沖縄県副知事の牧野浩隆氏が「バランスある解決を求めて~壮大な沖縄経済振興開発計画の復活~」と題して講演した。牧野氏は政府が国を挙げて沖縄振興に取り組んだ歴史を紹介し、日米地位協定に関わる諸問題の解決については「憲法改正の声を沖縄から上げていくことが重要だ」と語った。(沖縄支局・川瀬裕也)
地位協定問題解決へ憲法改正の声上げよ
牧野氏は、1995年に金武町(きんちょう)で発生した米軍人による少女暴行事件をきっかけに、沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO)が設置されたのと同時に、政府主導の1000億円規模の県内米軍基地所在市町村活性化事業「21世紀・沖縄のグランドデザイン」構想が始まったと解説した。
当時、各省庁が86件に上る沖縄振興策を提示したほか、県内各市町村からも多くの事業案が挙げられ、それらを実現すべく首相を除く各大臣が参加する沖縄政策協議会も発足した。
これらの動きを踏まえ、96年9月に橋本龍太郎首相(当時)は談話を発表し、同構想に着手するための準備金として約50億円の調整費を予算計上することを約束。翌97年11月、復帰25周年記念式典で「国を挙げて沖縄振興に取り組む」とメッセージを語った。
しかし98年2月、革新系の大田昌秀県知事(同)が国による海上ヘリポート基地建設受け入れ案を拒否したことで、これらの振興策の多くは凍結され、沖縄振興開発特別措置法改正も留保。沖縄政策協議会も一時中断されることとなった。
牧野氏は、「これらの計画がすべて実現していたならば、どれほど今の沖縄が発展していたことだろう」と当時を振り返り、「戦後最高の時代だった97年の状態にどのように復活するかが今のわれわれに問われている」と語った。
また、石破茂首相が総裁選期間中にたびたび公約として取り上げた「日米地位協定の見直し」について、日米同盟が成立した経緯などを振り返った上で「石破氏は地位協定ができた背景をしっかりと理解しているのか」と疑問視した。
石破氏の発言を受け、県内の共産党など革新系団体が「地位協定の改定」と同時に「平和憲法を守る」などと掲げていることに対し「矛盾に気づかないのか」と一蹴。「憲法を変えて、自衛隊を他国の軍隊と同様に運用できる体制をつくらなければ、地位協定の見直しなど到底できない」と述べた上で、「まず憲法改正の声を沖縄から上げていかなければならない」と訴えた。
講演に先立ち、後援団体・沖縄総合戦略研究所の竹林春夫代表は「どこで沖縄経済がダメになって、どのように復活していくのかを知るためにも、正しい沖縄の現状を理解する必要がある」とあいさつした。