Home国内【連載】脅かされる信教の自由㊱ 第5部 歪められた「2世」像 宗教違っても出会い広がる

【連載】脅かされる信教の自由㊱ 第5部 歪められた「2世」像 宗教違っても出会い広がる

「親が大変無理をして献金をしていたことは身に染みている。でも、今の家庭連合は過去の無理な背伸びを反省し、更正している教団であるとも感じている。メディアには平等に報じてほしい」

神奈川県在住の40代主婦、竹内祐子さんは4歳の時、親が世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に入信した。母親は熱心な信者として活動しているが、父親は一時期信仰していたものの、次第に教会に対して反感を抱くようになり、現在は母親の信仰には黙認という状態だ。両親の教団への態度が異なっていたこともあり、どちらかに偏ることなく育ったという竹内さんは「信仰を持つかどうか、大人になってから自分で決めた」と語る。

竹 内 祐 子 さ ん と そ の 家 族 = 本 人 提 供

その一方、メディアで教団批判を繰り返す元2世信者たちの証言に対し、「少し気持ちが分かる」と話す。「私が専門学校生だった頃、親が献金のために寮費を出せず、私のバイト代を充てていた。今は親に恨みはないものの、当時の私は不満だった。その時、私が抱いていた親への恨みのような感情を、どんどん膨らませてしまった人はいると思う」

しかし、殺人に走った山上徹也被告を「正しい」とは全く思えなかった。メディアには事件は許されないとしながらも、被告の「気持ちは分かる」という元信者の2世が現れたが、その考えは変わらない。また、X(旧ツイッター)上で信者である母親への虐待を公言する元2世の投稿を見つけたこともあり、「投稿が真実か分からないが、さすがに間違っている」と憤る。

昔、母親が教会スタッフから献金を求められたことは耳にしていたが、大人になった自分が献金を強要されたことはなかった。

「過去において、さまざまなトラブルはあったのだろう。ただ、世代が替わったことやコンプライアンス宣言の影響もあってか、少なくとも現在、私の周辺では(献金トラブルを)耳にしない」と指摘。普段目にしている教団の姿と世間で報じられる教団像の信じ難い乖離(かいり)に「訳が分からない」と戸惑う。

「等身大の教団よりも凶悪に書き換えられてしまった。私たちの本当の姿を世間に見てもらいたいし、そういう努力をしなければならない」

竹内さんには中学生の子供もいるが、「一連の騒動をどう受け止めていいか分からないようで、安倍晋三元首相の暗殺事件後は教会から足が遠のいている」と説明する。子供に信仰を押し付けるつもりはないという竹内さんだが、「私はこの教えで感動した経験があり、世間から反社と言われようが教会から離れることはない」と断言する。

信仰を持ち、よかったことの一つに「ほかの信仰を持った人たちを、心から受け入れることができたこと」と竹内さんは強調する。ある時、友人が他宗教の信者であることを知った。自分も信仰を打ち明けてからは、以前より深い話ができる間柄になったという。

「お互い信仰を持つ前は、社会に希望を持つことができなかったとか、そういう話をしながら共感し合えることがたくさんあった。ここまでの理解者は普通に生きているだけだと、なかなか見つけられない」

この出会いを通じ、宗教が違っていても世界が広がるという体験をした竹内さんは「宗教的な価値観を持つ人たちが差別や蔑視を受けるような、人権無視の世界が当たり前にならないよう、私も努力したい」と訴える。

(信教の自由取材班)

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