トップ国内【連載】2024衆院選 注目区を行く(8)自民 分裂乗り越え再結束 島根1区

【連載】2024衆院選 注目区を行く(8)自民 分裂乗り越え再結束 島根1区

小 雨 が 降 る 中 、 遊 説 に 聞 き 入 る 有 権 者 19 日 、 島 根 県 松 江 市

「私は保守です」。イメージカラーのオレンジ色の上着を身に着けた立憲民主党の亀井亜紀子は堂々と語る。亀井候補の父・久興(ひさおき)は、国土庁長官も務めた元自民党議員。しかも津和野城守の家柄だ。

ちょうど、選挙期間中の20日に開催されていた松江祭鼕(どう)行列にも参加し、地元の有権者を前に郷土愛をアピールした。

政治歴は、父親の秘書時代を含め20年。「3人の候補者の中で私以上に島根の課題を知っている候補者はいません」と強調する。「少子化、高齢化、赤字のローカル線問題」など山積みの課題に「官から民にという新自由主義政策の限界が来ている。住民の足である木次(きすき)線は守る」と意気込む。

知名度を生かしてミニ集会を重ねたことも奏功し、4月に投開票された衆院補欠選挙では、保守王国の島根県の中で岩盤保守と言われる隠岐諸島も亀井が制して当選した。その土台の上で、今回は自民党を応援する企業を何度も訪問。保守の切り崩しを図っている。

一方、自民の高階恵美子は「島根の創生と医療福祉の充実した幸福度ナンバーワンの島根にします」と訴える。

高階は東北出身。地元での知名度は、亀井とは格段の差がある。それを補うため、地元出身で参院当選同期の官房副長官・青木一彦と二人三脚の選挙戦を行っている。

「補欠選挙は、県の自民党が完全に分裂した。錦織(功政(のりまさ))か桜内(文城(ふみき))か、どちらを候補に立てるか。19年の知事選の時も丸山(達也)か大庭(誠司)か、どちらを立てるかでもめた。一枚岩になれなかった。それが敗因」

高階陣営の議員はこう話す。補選の候補だった錦織については、もう一度選挙に出る気はあったが、敗戦後、誰も「次に頑張れよ」と声を掛けてくれる人がいなかったという。候補者選定の中で、県知事、市長、県議などの名前も俎上(そじょう)に載った。しかし、「自民の分裂状態を知る地元の有力者は誰も立たなかった」(前出の議員)。仕方なく、中四国の比例代表の高階に白羽の矢が立ったというわけだ。

陣営関係者は、「実際にポスター張りに地域を回っても、特に松江市内で『自民党はもう飽き飽きした』という声を聞くんです」と明かす。

自民県連は「2度も負けるわけにはいかない」と、前回分裂して動かなかった県議らを選挙の主要ポストに据え、一丸となって戦う体制をつくった。

補選との違いは、公明党の取り組みだ。先回は選挙の告示前日に推薦を決めたのに対して、早い段階で動き「島根1区は高階、比例は公明」と叫ぶ。「公明党の市議が全員、高階候補の演説会に来て、動いていた。1万票は固い」と前出の議員は言う。

選挙の遊説中に交通事故に遭った有権者を看護のプロとして助けるなど、高階の美談が流れるが、どれほど浸透できるかは未知数だ。

今回は共産党が独自候補を立てているため、亀井は約1万票ほど減らす公算。地元新聞も亀井やや優勢と報じる中、自公が一丸となって巻き返しを図るか、少しづつ寒さも忍び寄る松江で熱い戦いが繰り広げられている。 (敬称略)

 (衆院選取材班)

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