トップ国内【連載】2024衆院選 注目区を行く(7)与野党前職が因縁の対決 愛媛2区  

【連載】2024衆院選 注目区を行く(7)与野党前職が因縁の対決 愛媛2区  

演説に耳を傾ける有権者ら=16日、愛媛県今治市 (宮沢玲衣撮影、一部画像処理しています)

今回の衆院選は小選挙区定数の「10増10減」に伴い、愛媛県の定数が4から3に減少して実施される初の選挙戦だ。2021年の前回選で、小選挙区の議席を独占した自民党が再び完勝するのか、それとも野党側がそれを阻止するのかどうかが最大の焦点となっている。 

愛媛の最大の注目区は2区。旧3区の西条市、新居浜市、四国中央市に、旧2区で12回連続当選した総務相・村上誠一郎の出身地である今治市と上島町が加わった。 「非常に厳しい戦いです」。自民前職の井原巧の応援弁士らは口をそろえて、渋い顔でこう語る。井原は旧派閥の「政治とカネ」の問題で厳しい戦いを強いられている。 

自民総裁の石破茂の采配により、井原は比例の重複立候補ができない。小選挙区で勝たなければ議席を失う「背水の陣」で選挙戦に挑むことになった。総裁選では、井原は旧安倍派にもかかわらず石破に投票した。愛媛の自民を長い間支えてきた重鎮・村上への配慮から、石破を支持したが、梯子(はしご)を外された形になった。 

選挙戦2日目には、石破が今治市に入った。集まった支持者とステージの間に1㍍置きに警察官や警備員が立つ厳戒態勢の中、石破は市長経験のある井原を「一人一人の喜びと悲しみを一番良く知っているのが井原巧だ」と持ち上げた。 公明党の山崎正恭も応援に駆け付け、「小選挙区は井原巧、比例区は公明党へ」と強調した。 

今治での演説会には、仕事帰りらしい会社員の姿が目立った。日が落ちる公園に2時間もの間、立ったまま話を聞いた支持者の姿を見た井原は声を震わせ、涙ぐんでいた。村上の地盤である今治で、どれだけ得票を伸ばせるかがカギとなる一方で、無党派層への浸透に課題が残る。 

井原と激しく争うのが、立憲民主党前職の白石洋一だ。前回衆院選旧3区では井原との一騎打ちに僅差で敗れ、比例で復活当選した。因縁の対決となる。 白石陣営は区割り変更を見据え、約3年前から島嶼(とうしょ)部も含め満遍なく回ってきたという。多い日には名刺400枚を配った。「小選挙区で勝つことだけを考えて、この4年間過ごしてきた」。白石は有権者に切々と語り掛けた。 

新たに選挙区に加わった今治市は、白石が高校まで過ごした場所。愛媛県で松山市に次ぐ人口規模で、2区の有権者の約3分の1が今治に住む。白石は「裏金なし」「パーティーなし」「今治育ち」をアピールし、支持固めを狙う。 

当選の機運が高まるにつれ、マイクを握る手には熱が入る。第一声では「自民党に献金をする。その見返りとして(献金した)自社に有利な補助金制度を作らせる。この積み重ねが30年続いているから、社会保障は充実しないし、生活に見通しがつかない」と説明した。 

「一般の人が自分の人生を歩む、そういう社会をつくりたい」と訴える白石に、立民の幹部らも次々と応援に入っている。中盤戦以降、白石は連日のように個人演説会を開き、自民と大企業の「癒着と利権」についてホワイトボードを使って支持者らに説明した。 

2人を追うのが、日本維新の会新人、梶野耕佑。梶野は昨年12月、出馬に向けて県外から今治に転居。維新支持者以外への浸透を急いでいる。2区唯一の新人として若さを前面に押し出す。(敬称略) (衆院選取材班)

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