伊達政宗公が絶賛 何度も訪問
巨岩と空飛ぶだんごに感動

仙台藩主の伊達政宗公が「松島と厳美が、わが領地の二大景勝地なり」と自慢し何度も訪れたと伝わる岩手県一関市の厳美渓(げんびけい)。名物の「空飛ぶだんご」も一目見ようと10月中旬訪れた。
一関駅からは車やバスで約20分。午前8時半ごろ、渓谷から徒歩約10分の道の駅「厳美渓」に車を止め道路斜め向かいの歩道を進むと厳美渓を渡る橋があった。文化3(1806)年、地元有名人と里人が力を合わせ架橋したのが始まりで多くの文人墨客(ぼっかく)が訪れるようになった。
入り口の案内板を見て、ごつごつした岩畳を降りると、名物の「空飛ぶだんご」の光景が見えた。説明通り籠に500円玉を入れ木づちをたたくと、対岸の店員が手動で上まで手繰り寄せ、籠に入れたと思うとあっという間に手元に届いた。3種類のあんのついた串団子が箱に入り、お茶もついている。仙台から来た若い夫婦は「もちが柔らかくておいしい。お茶が2カップついて、うれしい」と仲良く口にほおばっていた。
渓谷美の方は、ごつごつした岩が両岸に並び、上流から水しぶきを上げて流れ落ちる、まさしくエメラルドグリーンの水流。奇岩、巨岩、甌穴(おうけつ)、深淵(しんえん)、滝など約2㌔㍍にわたる渓谷美が続く。幾つもの甌穴は、砂や小石が巨岩に開けた穴だ。
橋を渡って下流側を歩くと、政宗公が自ら植えたと伝わる貞山桜(エドヒガン)があった。「桜の季節がまたいいですよ」と市民。つり橋は整備中で渡れない。
道路の先を少し行くと厳美市民センターがあり、隣の食堂でラーメンを食べる。隣に約300年前の農家を移築した立派な茅葺(かやぶき)家屋(岩手県指定文化財)がある。
センターに10月26日開催の「厳美むかさり行列」のポスター。昭和30年ごろまで行われていた嫁入り道中の再現で午前11時30分に温泉いつくし園を出発する。
道の駅左手の一関市博物館も見どころだ。蘭(らん)学者や国語辞書の編さん、日本刀の源流の展示は歴史好きにはたまらない。特に日本独自の数学である「和算」のコーナーで問題を解くのは脳トレにはいいかも。
(伊藤志郎)