トップ国内【連載】2024衆院選 注目区を行く(2)野党乱立も自民離れ顕著

【連載】2024衆院選 注目区を行く(2)野党乱立も自民離れ顕著

街頭演説に耳を傾ける人々=14日午後、千葉県浦安市(森啓造撮影)

「どうしても勝って地元・浦安に恩返ししたい」
終始落ち着いた口調で語っていた立憲民主党公認の矢崎堅太郎が、浦安出身と千葉県議4期15年の経歴をアピールした上で最後に声を張り上げて訴えると、聴衆から拍手と声援が送られた。

公示日を翌日に控えた14日夕方、陽(ひ)が傾き日陰になった祝日の新浦安駅前の広場には、矢崎の応援に駆け付けた立民代表の野田佳彦らを囲うように数百人の有権者が集まった。

市川市の大半と浦安市の全域を占める千葉5区は、2023年の補欠選挙で当選した自民党公認で公明党推薦の英利アルフィヤと、矢崎がしのぎを削る。23年4月、政治資金規正法違反で自民を離党した薗浦健太郎の辞職に伴う補選が行われた。7人による混戦を5万578票で英利が制した。次点の矢崎との差は5000票弱。惜敗した立民陣営は「野党候補の乱立が原因だった」と振り返るが、今回も補選同様、野党乱立で接戦の様相を呈している。

矢崎に続いてマイクを握った野田は、同区の野党一本化について、選挙準備期間が短く、他党と調整できなかったと明かした。有権者からは「なぜ一本化しないのか」というため息交じりの声もあった。

主要政党の公認候補が乱立する選挙区とあって連日、野党各党の党首や幹部が応援に入る。

議席を死守したい自民陣営は苦戦を強いられている。17日朝、前デジタル相の河野太郎が応援に入った。出勤する人が足早に行き交う市川市の本八幡駅前で、「クリーンで多様性を代表する英利アルフィヤは、今の自民党の中で、最も自民党らしくない政治家だ」と紹介すると、英利が大きく苦笑いする場面があった。

英利は、政治資金問題や薗浦の不祥事を念頭に、「今まで政権与党だった自民党が今まで皆さんに寄り添っていなかった」と述べ、自民は生まれ変わるべきだと強調した。

党内でもリベラル色が強い英利の課題は、地元の保守層を維持できるかだ。デマの拡散にも頭を抱える。「両親はウイグル出身でトルコ系(ウイグルとウズベク)。平成11年に家族で日本に帰化」(公式サイトから引用)という出自なども注目される。10月12日、英利の事務所は「誹謗(ひぼう)中傷・誤情報の拡散に対するステートメント」を発表し、「偽情報や誹謗中傷に対し、断固として厳正な法的措置をとる」姿勢を示した。

自民陣営関係者によると、「チラシを配ろうと手を伸ばすと、『自民には入れない』と嫌な顔をされ、拒否されることもしばしば」ある。政治とカネの問題を起こした選挙区で、住民の風当たりの強さを目の当たりにしている。

こうした中、自民、立民の切り崩しを図り追い上げるのは国民民主党公認の岡野純子。浦安市議3期の実績と2児の母をアピールする岡野は現役世代や子育て世代に焦点を合わせている。公示日の15日午後、本八幡駅前で選挙カーの上から街行く人に笑顔で手を振りながら、「この街をずっと見てきた」と声に力を込めた。17日には党代表の玉木雄一郎も応援に入った。

非自公政権の誕生を望む有権者の中には「一番勝てそうな野党候補に投票しなければ」という声も上がっている。現職議員が不祥事を起こし、政治への信頼が下がった中での補選の投票率38・25%と、21年の衆院選から15.82ポイントも低下した。各陣営とも前回投票に行かなかった無党派層の掘り起こしに躍起になっている。(敬称略)

 (衆院選取材班)

 【千 葉】

 ▽5 区(6人)

岸野 智康30☆元議員秘書 維新

矢崎堅太郎57☆元県議   立新

宮路 純一35 鉄道会社員 参新

岡野 純子46☆元浦安市議 国新

桜井 雅人51 元市川市議 共新

英利アルフィヤ36☆元国連職員 自前① 推(公)

☆は比例代表との重複

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