世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)は2009年のいわゆる「コンプライアンス宣言」以降、組織改革の一つとして取り組んでいるのが、情報発信による組織の「見える化」(透明化)だ。
関東周辺の若手信者たちが中心となって21年12月から始め、公式LINEなどを通じて配信中の動画「SEISYUN TV」(青春TV)はその試みの一つ。
「教団内外に対して映像で情報発信できるコンテンツを、2世など若い信者の視点から発信したい」
青春TVの企画担当者で、首都圏で2世など若い信者を担当する「成和部長」の藤岡俊之さんはそう語る。番組の企画・制作は首都圏各地の有志が担当。番組は主に「特番」と「定期配信」の2種類で、当初は限定公開だったが、現在はユーチューブでも自由に視聴できる。
当初は教団内コンテンツとして始まったが、安倍元首相暗殺事件以降、内容はより2世の本音や教会改革などをクローズアップ。藤岡さんたちは、カルト的な団体の特徴の一つとして「閉鎖性がイメージの一つに挙げられやすいのならば、どのような団体なのかを発信していく」と考えた。そのためには「触れるのを避けてきた『負の部分』にもスポットを当てる取り組みをしている」という。
定期配信の内容には、過料裁判など教団に関する時事ニュースの解説、2世信者本人が語る生い立ちのエピソード、国際結婚の家庭や養子縁組を通じて育った2世たちが登場している。
また特番では、教会改革をテーマにした企画も実施した。これまで3回放送された「成和部リニューアル会議」という番組は、2世信者たちからアンケートを募集し、内容を公開するものだ。3月に放送された回では、公式LINEを通じて行われた所属教会に対して改善策などを求めるアンケート調査が行われ、233件の回答が寄せられた。
回答結果には「(教会に)活気がある」という前向きな意見もあるものの「頑張って活動しないと存在価値を認めてもらえない」「教育の考えが古く、押さえ付ける雰囲気が強い」といった意見も。
ゲストとして招かれた各教会の青年スタッフなどからは「居心地の悪く感じる雰囲気を作ってしまっているかもしれない」という反省の言葉や、「ほかの教会の雰囲気を学んでみたい」という声も上がった。これらの意見は現場にフィードバックされ、改善材料につなげているという。
今年からは動画の一般公開を徐々に進めており、公式チャンネルの登録者数も倍に増えた。最初はユーチューブに公式チャンネル、次いでX(旧ツイッター)を始めるなど、反応を確認しながら進めている状況だという。9月28日には一般メディアも招いた公開収録も実施された。
藤岡さんは「一般公開を進めつつ、家庭連合の信者たちが普通の人間であることを伝えていければいいと思う。顔が見えないと恐怖に感じてしまう。イメージを一方的に作られたくないのなら、情報発信にチャレンジし続けていかねばならない」と指摘する。
番組の司会などに出演している今中華奈さん(28)は、22年ごろ、制作スタッフの一人として誘われ、参加したという。「信仰は苦しみながらやるものではない。もし苦しいなら、そのことを共に共有していきたいという思いがあった」と振り返る。
今中さんはまた、「異性と付き合いたいとか、おしゃれしたいとか、教会内では言いづらいことも、番組を通じて相談できるような環境づくりをしていきたい」と意欲を見せた。(信教の自由取材班)