世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)に関する批判報道の中で、離教2世の証言の多くは、「高額献金による貧乏」「教義による非人権的な締め付け」などを指摘し、「教団の解散」しか解決方法がないと叫んでいる。こういった動きを2世信者はどう捉えているのか。
中国地方で暮らす30代会社員の末森勇治さん(仮名)は、両親が信者だが、信仰に関して両親と対立したことはほとんどなく、「新興宗教の家庭と聞くと変な想像をされるかもしれないが、一般的な日本人でも神社に行ったりお寺に行ったりと宗教に関わることは多い。家庭連合もそのうちの一つと変わらない感覚だった」と振り返る。
親から極端に何かを制限された経験もあまりなく、そのため報道やSNSなどで流れる宗教2世の批判を目にしても「自分の家庭と違い過ぎて、教団の責任というより個々の家庭の問題に見える」と困惑の表情を浮かべる。「親にとって宗教だけでなく思想的にも、子供が自分と根本的には違っていてほしくないものだ」。それゆえ、どの家庭にも起こり得る親子の価値観の相違を家庭連合に限定して論じるのは「ナンセンスでは」と首をかしげる。
一方で、末森さんは現在、教団とは距離を置き、行事や活動などには参加していない。理由の一つとして「教団組織が大企業病に犯されていると感じる」と問題点を挙げる。「大企業病」とは一般に、縦割り組織で意思決定が遅い、顧客より上司を優先、社員のモチベーションが低く経済環境の変化に対応できないなどの弊害を指す。
以前、末森さんは教団内で、自主的にイベントを開催しようとしたが、所属教会の教会長が唐突に介入し、うまくいかなかった経験があった。「責任者クラスが上から目線で一方的に指示を出す傾向がある。何かボランティアなどで教会に協力したいと思っても、いろいろダメ出ししたり、要求がエスカレートしたりと、結果的に『脱落』するケースを自分以外に何人か見てきた」と残念がる。
「企業風に言えば、教団がスタートした時のがむしゃらな努力がうまくいってしまい、その時のやり方をいまだ引きずっているイメージだ。時代は変わったのだから、もっと関係性をフラットにし、個々の信者を大切に扱わないと立ち行かない」と懸念を示した。
兵庫県在住の20代男性、塚原望さん(仮名)は中学生のころ、教団の研修会に参加した際に研修の熱血的な指導や雰囲気に反発し、教会から足が遠のいた。所属教会でも教会長が「暴走するタイプ」に見え、10代だった塚原さんは「教会に行きたいと思えない」心境に傾いた。
だが、メディアやネット上に流れる教団への一方的な批判に怒りを隠さない。「確かに生活に制約がなかったとは言えないが、家庭連合のことしか考えられないほど外界と遮断された環境にいたわけでもない。常軌を逸したことはもちろん、信仰の実践を強要されたことだって一度もない」と断言する。
「自分は教会で憲法上の自由が侵害されたと感じたことはない。むしろ報道側が教義と直接関わりのない関連団体すら忌み嫌われるような誘導をしていることこそ、信教の自由が侵されているのではないか」
さらに報道は「『宗教2世は被害者』という構図ありきで、同情というよりも嫌悪感や偏見を助長させる」と危機感を募らせる。
一方、塚原さんは「年齢を問わず信者たちは善悪観のしっかりした人が多い。だが、宗教的な視点に重きを置くあまり、社会や周囲との協調を軽視することがあるのも事実。そこを改善する必要がある」と訴えた。(信教の自由取材班)