トップ国内【連載】石破新内閣の課題(中) 独自外交政策は時期尚早 地方創生・生活改善に期待

【連載】石破新内閣の課題(中) 独自外交政策は時期尚早 地方創生・生活改善に期待

記者会見する石破茂首相=1日午後、 首相官邸

総裁選では「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」や防災庁の創設など独自の目玉政策をアピールした石破茂首相だが、実現へのハードルは高いものばかりが並んだ。首相就任後初の記者会見ではトーンダウンしており、早くも暗雲が立ち込めている。

石破氏は1日夜の記者会見で、「日米同盟をより強固なものとするために、当然、地位協定の改定が伴う」と語り、日米地位協定の改定に改めて意欲を示した。協定は在日米軍の日本における地位や特権などを定めたものだが、米軍による事故や事件が起きた際に日本の警察が関与できないといったことがたびたび問題視されてきた。米軍が駐留する他国では改定などを行った例もあるが、日本では1960年の締結以来、2015年に補足協定が追加されただけで一度も改定されていない。

現行の協定に問題があるのは与野党問わず認めることだが、その前にやるべきことがある。憲法を改正し、自衛隊を正式に軍隊と位置付けることは必要不可欠で、その上でさらなる防衛力強化を図らなければならない。

アジア版NATOについても、周辺国の反応は冷ややかだ。インドのジャイシャンカル外相は1日、「われわれはそのような戦略的枠組みは考えていない」と述べ、支持しない考えを示した。

アジア版NATOの構想が覇権主義的動きを強める中国などを念頭に置いたものであることは間違いないが、同じ価値観で一致できる国はアジア全体で見ると決して多くはない。日米豪印4カ国でつくる協力枠組み「クアッド」は、軍事協力ではないという「建前」があるから成立している側面もある。

石破氏は米領グアムに自衛隊基地を置くことを提案する。いずれの提案も国内外で「時期尚早」と評価は厳しい。

また、長年の持論である防災庁の設置についても道筋は見通せない。新内閣では防災庁設置準備担当相を置き、まずは内閣府の防災部門の拡充に取り組む方針だが、防災庁そのものに対し現行の体制で十分とする否定的な意見も根強い。

一方、地方創生への取り組みには期待も集まっている。山陰出身としては、竹下登氏が退任した1989年以来35年ぶり、鳥取県出身者としては初の首相だ。党総裁選では高市早苗前経済安全保障担当相が首都圏や大阪、愛知、福岡など都市部を中心に党員票を集めたのに対し、石破氏には地方からの得票が多かった。党員・党友の総得票数では高市氏が石破氏を上回っていたが、決選投票の地方票で逆転したのは、都道府県別で票数が多い方の候補に各1票が割り振られるからだ。

地方創生については「地方創生2・0」を掲げ、中央省庁の地方移転などを目指す考えを示している。1日の記者会見では文化庁の京都移転について「役所が大喜びで行ったとは思っていない」とした上で、「どの省庁がどこに移ることが一番日本のためなのかという議論はもう一度徹底させたい」と意気込みを語った。安全保障政策と同様、実現には強いリーダーシップが求められる。

会見では、防衛力強化に向けた取り組みの一環として自衛隊員の処遇改善を挙げ、自らを長とする関係閣僚会議を設置すると表明した。定員割れが続く自衛隊にとって急務の課題であり、自衛隊の最高指揮監督権を持つ内閣総理大臣として重要な視点だ。地元・鳥取県八頭町で行った総裁選出馬会見では「党よりも国民一人一人を見るのが自分の原点」と語った。自衛隊員の処遇に目を向けたように、国民一人一人に対しても生活改善の実感が持てる施策を打ち出せるかが政権浮揚の鍵となる。

(亀井玲那)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »