万策尽きた辺野古移設阻止
万策尽きた辺野古移設阻止
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一部自民県議から冷ややかな見方も
沖縄県の玉城デニー知事は9月30日で2期目の就任から2年となった。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画反対を公約に掲げ再選したものの、裁判での敗訴や選挙での敗北が続く。玉城氏は石破茂新首相に、移設工事の中止などを見据えた、日米地位協定の見直しなどを期待しているが、一部県議らからは冷ややかな声も聞かれる。
(沖縄支局・川瀬裕也)

故翁長雄志氏から続く「オール沖縄」県政は、玉城氏の再選で3期目となり、10年が経過した。この間、県は国と複数の訴訟で争い、辺野古移設阻止に動いてきた。しかしついに昨年9月、県にとって事実上最後の策となる、移設工事の設計変更資料の承認を巡る訴訟で最高裁が県の敗訴を言い渡し、万策が尽きた形となった。
玉城氏を支えるオール沖縄は、選挙での敗北も続いた。玉城氏が2期目に選出された2022年に行われた県内各市長選では、オール沖縄に対抗する自民党系の候補が七つの市すべてで勝利を収めた。長年オール沖縄に支えられ那覇市長を2期務めた城間幹子氏がオール沖縄と距離を取り、保守系の知念覚現市長に市政を託すなど、盤石だと思われていたオール沖縄の体制にも陰りが見え始めた。
さらに今年6月に行われた県議選では、共産党をはじめとするオール沖縄系与党が惨敗し、16年ぶりに保守系野党に過半数を奪われた。松川正則前市長の急逝に伴い9月に実施された宜野湾市長選挙でも、「辺野古移設反対」の民意は示されることなく、オール沖縄が全力で応援した候補は敗北。玉城氏とオール沖縄はさらに厳しい立場に立たされることとなった。
そのような中で2期目の折り返しを迎えた玉城氏は9月27日、地元紙などへのインタビューで、辺野古移設について「対話によって解決策を求めることが重要だとの考え方に変わりはない」と語り、従来の姿勢を堅持することを示している。その上で、自民党総裁選で新総裁に石破茂元幹事長が選出されたことを受け、基地問題解決の新たな糸口に期待を込めた。
石破氏は9月17日に那覇市内で開かれた総裁候補9人による街頭演説会の中で、基地負担軽減策について、日米地位協定の見直しに着手することや、米軍基地を自衛隊と米軍で共同管理することなどを提案している。また石破氏が幹事長だった13年に辺野古移設容認を県出身議員に求めた経緯について、「十分に理解を得たかといえばそうではなかった」と振り返った。
玉城氏は27日、これらの石破氏の発言を念頭に、「県民の声を反映した(日米地位協定の)見直しを期待する」とコメントを発表。石破氏がかつて防衛相などを務めた経験があることを踏まえ「沖縄における米軍再編にも携わられ、米軍基地問題をはじめとする沖縄の実情を理解されているものと思う」と評価。その上で、辺野古移設について、「軟弱地盤や工期の問題など辺野古の現状を踏まえ、沖縄県との対話を実現してほしい」と要求した。
これらのやりとりについて、ある自民県議は、「移設工事もやっと軌道に乗り、県民の理解を得られる段階にきたのに、またかき乱すようなことだけはやめてほしい」と冷ややかな見方を示した。
石破氏は29日のフジテレビ系列の番組で、日米地位協定の見直し発言で米国から懸念の声が上がっているとの質問に対し、「(協定)運用の改善の一歩先にいかないと日米同盟が強固にならない」と持論を展開している。さらに石破氏は、協定の見直しを通して、自衛隊の訓練基地を米国に置く必要性などにも言及しており、今後、県内米軍関係者をはじめ、混乱が予想されそうだ。