【立憲民主党 野田新代表の課題】《下》論功行賞人事で多難な結束 中道保守路線も分裂含み

立憲民主党代表選を終えた(左から)枝野幸男元代表、泉健太前代表、野田佳彦新代表、吉田晴美衆院議員=23日午後、東京都港区

立憲民主党の野田佳彦代表は就任翌日、新執行部を発足させたが、一部の議員は総会を欠席し、不満をあらわにした。野田氏は代表就任演説のあいさつで「ノーサイド」と呼び掛け、党が一つになって自公を過半数割れに追い込み、政権交代を目指すと決意を誓ったが、前途多難なスタートだ。

幹事長には2021年の代表選に立候補した小川淳也衆院議員、政調会長に中堅・若手議員のグループ「直諫の会」を率いる重徳和彦衆院議員らが就任。中堅を積極起用することで世代交代をアピールした。

小川氏の人事は、代表選で決選となった枝野幸男元代表の陣営を不快にさせた。21年衆院選の香川1区では共産党からも支援を受けて当選した小川氏はもともと、枝野氏を支援するリベラル系の党内最大グループ「サンクチュアリ」に所属していた。ところが、代表選の告示直前に離脱。今後、同グループなど左派勢力との確執が生じる可能性がある。

党執行部9人の布陣を見ると、野田氏を支援した人物が5人を占めた。代表選挙を争った枝野氏、泉健太前代表、吉田晴美衆院議員の名前はなかった。3候補を支持した議員からは「露骨な論功行賞」と不満が漏れるのも当然だ。

2012年12月の衆院選で民主党下野を招いた野田氏は、安倍晋三元首相に「悪夢のような民主党政権」と皮肉られた「戦犯」。「昔の名前で出ています」と自虐的なフレーズを多用する元首相・元代表の野田氏が代表に選ばれたのは、早くて10月27日にも実施される衆院総選挙で戦える“選挙の顔”となれるとの期待からだ。

野田氏に対しては、革新共闘を辞さない枝野、泉両氏とは一線を画す「穏健な保守層」へのシフトがある程度、期待されたと言える。

2014年の衆院選で70議席台にとどまった前身の民主党は党勢拡大を目指し、16年3月に維新の党(現在の日本維新の会)と合流し、民進党に衣替えした。しかし民進党は17年に分裂。中道保守への流れを嫌った枝野氏が同年10月に立民を立ち上げた。

左派リベラルに寄り過ぎていた政策を民主党時代の中道現実路線にシフトできるかが、野田氏の手腕が問われるところ。

野田氏は、代表選の公約で「原発に依存しない社会を実現」するとした。7日の代表選の討論会で、電力需要が伸びている中で「理想を掲げながら、どうやって現実政策を進めるかという立場」を強調。立民が党の綱領で掲げる「原発ゼロ」の目標を封印した。

また「日米同盟を基軸とした外交・安全保障政策の展開」も公約の柱に掲げた。18日の討論会では、「外交安保の基軸」である日米同盟について「個人的な信頼関係を築くところから始めなければいけない」と意欲を見せた。安倍政権下で2015年に成立し、集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法に関しては、「外交や安全保障は極端に180度すぐ変えることはできない」と述べ、自公政権の政策を継続する姿勢を示す。

就任記者会見で、自民と政策が似通っていると指摘されると、「選択的夫婦別姓は明確に違う。カネをかけ過ぎる政治には強く反対しているし、世襲制限も言っている」と説明した。非自民の中道保守層をどう取り込めるかが当面の課題になるだろう。

野田氏は衆院の早期解散を警戒する。23日のNHKのインタビューで「選挙区調整はできる限りやれるように、対話を欠かさない関係を構築しておくことが基本」と話しており、そのために時間が必要であることを示唆した。「復旧復興のために補正予算を成立させることが最低限の政治の責任。それをしてから信を問うなら受けて立つ」。衆院選勝敗ラインに設定した自公過半数割れを実現できるか、結果が出るのはそう遠くはない。(立民代表選取材班)

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