【立憲民主党 野田新代表の課題】《上》保守の不信感払拭できるか 共産党との共闘で連合反発

立憲民主党臨時党大会の最後に気勢を上げる(左から)枝野幸男氏、泉健太氏、新代表の野田佳彦氏、吉田晴美氏ら=23日午後、東京都港区
野党第1党の立憲民主党は23日の代表選挙で野田佳彦元首相を選出した。岸田文雄首相の下で内閣支持率が低迷し、野田新代表は次期衆院選挙で「政権交代」を訴える構えだ。立民・野田体制の課題を展望する。(立民代表選取材班)

「代表選挙にチャレンジする決意を固めた。即ち再び内閣総理大臣を目指す」

野田氏が8月29日に地元・千葉県習志野市のJR津田沼駅前で行った出馬表明に従えば、代表選は首相再就任の関門にすぎないことになる。代表選を制した23日、野田新代表は記者会見で「本気で政権を取りに行く」と決意を語った。

しかし、野田氏は2012年12月の総選挙で民主党政権に幕を下ろした当事者。敗軍の将のイメージが付きまとってきた。今回の出馬を働き掛けたキーマンは小沢一郎衆院議員だが、野田政権当時に消費税増税に反対して同党を集団離党し政権崩壊を招いたもう一方の当事者。民主党分裂後、党名変更を伴う野党勢力の離合集散の果てに両氏は立民に合流した。

この合従連衡、離合集散で「多弱野党」となった状況は、自民党と公明党の連立政権に不動の位置を与えている。その克服こそ野田氏が野党第1党党首として衆院選で政権選択選挙の“顔”となるための最大の課題となる。

もう一つの課題は、2015年の安保法制反対を契機とした共産党との野党共闘の清算だ。共産との共闘をスタートさせたのは民主党から民進党に党名変更した当時のことだが、労組・連合の反発を招き、民進が立民と国民民主党に再分裂する引き金にもなった。

立民、共産、社民、れいわ新選組からなる野党共闘の枠組みは左翼共闘の色彩が濃く、与党陣営から“立憲共産党”と揶揄(やゆ)された。21年衆院選で共産は「初の政権参加のたたかい」と連呼したが、立民は108から96へと議席を減らし、党創始者の枝野幸男代表が辞任している。かつて民主党が受け皿となった自民党への保守批判票は主に日本維新の会に流れた。

野田氏と小沢氏は東京都知事選のあった7月下旬に都内で会談し代表選に向けて意見交換した。都知事選では、東京を地元とする看板議員の蓮舫氏が参院議員を辞して挑んだ。共産の熱心な支援を受けたものの、落下傘候補の石丸伸二前安芸高田市長にも及ばず3位で落選。また立民の支持率は低く、自民裏金問題で迷走する岸田内閣の下でも1桁台のままだ。

そこで党内保守で元首相という重鎮の野田氏に出番が回ってきたが、枝野幸男元代表、泉健太前代表、吉田晴美衆院議員と争った代表選結果は、決選前の地方議員・党員サポーター票から野田氏に十分な党内基盤があるとは言えない。ポイント換算で野田氏139、枝野氏123、泉氏59、吉田氏49で、地方議員に限っては枝野氏71、野田氏58と枝野氏の方が多い。

他党との関係は23日の記者会見でも「それぞれの野党と誠意ある対話を続けたい」と述べたように曖昧な表現で、「野党一本化」の選挙協力では共産との関係に含みを残す。維新、国民などとの距離感は微妙である。

野田氏は、共産との政権構想の策定は否定している。これに対し共産は反発を強める。小池晃書記局長は23日、「共産の議席を伸ばすことが自民党政治の根本的な転換につながる」と述べ、衆院小選挙区で候補者の擁立を進める構えだ。

「穏健な保守層にアピールする中道勢力」というのが野田氏が代表選で訴えた立民の立ち位置だ。しかし、党内にリベラル勢力を抱え共産の票をもらった選挙協力の経緯もある。その中で自民離れした穏健保守層の不信感や連合の警戒感を払拭(ふっしょく)するには、民主党時代の反自民非共産の枠組みを堅持する姿勢を再び明示する必要があろう。

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