神奈川県二宮町の渡辺訓任(くにたか)議員(日本共産党)が、議員の立場を悪用し庁舎内職員に圧力をかけて党機関紙「しんぶん赤旗」の販売、配達を行っている――。本紙はこのほど、同町職員とされる匿名の人物から「ハラスメントから職員を守る神奈川県民の会」(出井健三郎代表)に郵送で届いた内部告発文(消印8月30日)のコピーを入手した。そこには、名指しされた渡辺町議が庁舎内管理規則に違反していることや、職員が町議の「心証を悪くしないために購読を続けている」ことなどが記されている。
内部告発文については、今月3日開催の総務建設経済常任委員会で「政党機関紙の庁舎内での購読勧誘の中止」を求める陳情が審議された際、意見陳述を行った陳情者代理人から冒頭の一文が紹介された。それに関し、町側としては「匿名の情報があっただけで、われわれには真実の確認のしようがないので、これをもって何かをするのはないのではないかと考えている」との回答にとどまった。
渡辺町議(同委副委員長)は「庁舎内管理規則を順守しているので、すでに陳情の根拠がこの二宮町にはないのではないか」などと強調。一方、陳情の賛成討論をした無所属議員が「二宮町はハラスメント根絶条例を作成中で、渡辺議員はその作成特別委員会の委員長だ。ハラスメントの要素が微塵(みじん)でもあるのなら、しっかりと解明して根絶していかなけばならない」と述べたが、陳情は4対1で不採択となった。
平然と「赤旗」配達
問題の一つは、告発文が指摘しているように町議が執務室内に「平気で入り込んで赤旗新聞の配達と購読料の回収をしている」という点だ。同町は共産党議員に「新聞の販売・集金」の庁舎使用許可証を7月1日に初めて出したが、「使用場所は執務室外」との条件を付けている。「保険の外交員は仕事スペースでない通路などに呼び出して交渉しているので容認できる」が「(赤旗の配達・集金は執務室内で行っており)おかしいに決まっているのに誰もそう言えない」と告発文は指摘している。
また、「渡辺氏から手心を加えてもらおうとする下心」が職員側にもあると聞いていることにも言及、「渡辺氏は圧力だと思われたくないのでしょうが、自分と共産党に都合のいい解釈をしているだけにしか思えない」としている。こうしたことから、実際には「しんぶん赤旗」の購読契約に際して、職員が議員から心理的圧力を感じている可能性が浮上する。
「県民の会」の出井代表は「今回の投書が、なぜ役所にではなく民間の会に届いたのか。職員が職場で声を上げにくい実情があるのではないのか。パワハラに悩む職員が一人でもいるとしたら問題のはずだ。他の自治体でもやっているように匿名での政党機関紙の購読実態アンケート調査を一度、行ってもらいたい」と語っている。
(「しんぶん赤旗」購読勧誘問題取材班)